過去ログ - 「奇奇怪怪、全てを呑み込むこの街で」
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40:名無しNIPPER[saga]
2016/03/30(水) 23:14:49.09 ID:k3vzK1BN0
「食べ物を分けてくれませんか? 少しだけで良いんです……」

「あ?」

その日、表通りを歩いていた男は、一人の少女に出会いました。

服はボロボロで、何処にでも居るありふれた子供です。親に捨てられたのでしょうか。

そのか細い足を震えさせながら、男に伏し目がちな目を向けます。

男の右手には、腹を満たすために買ったパン。なるほど、腹が空いて仕方がない者には、さぞかし輝いて見えるでしょう。

「チッ……今なら見逃してやる」

「……ごめんなさい」

虫の居所が良かった男は、少女に手をかけませんでした。

この街では、物乞いをする者は星の数ほど居ますが、その命は虫けらと同じです。

まるで息をするかのように、多くの子供が殺されます。少女はそれを理解していました。

「……ガキ、一つ教えてやる。此処で生きたきゃ、全てを踏みにじる位の覚悟でいろ。信じられるものは自分だけだ」

「……」

男は少女にアドバイスをし、背中を向けました。

その後も少女は寂しげな目を向け、男を見送っているのでした。

(……妙なガキだったな……珍しい目をしてた。絶望とも、憤りでも違う……)

(……何だ? ああクソ、どうでも良いんだよ、あんなガキなんざ)

何故自分はこんなにも苛立っているのでしょう? 

男は考えてみましたが、やっぱり分かりませんでした。


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