過去ログ - 「奇奇怪怪、全てを呑み込むこの街で」
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48:名無しNIPPER[saga]
2016/03/31(木) 22:22:00.09 ID:iRQLIy9b0
「……確かに真っ暗だな」

「いやー助かるよ、少数精鋭の方が色々と楽でねー」

朗らかに話すサングラスの男は、操作魔法で船を動かしています。辺りは「黒海」と言うだけあって、海の色は漆黒に染まっています。

天候は大荒れです。ひどい嵐にぶつかってしまったようですね。老人が巨大な結界を貼り、雨をしのいでいます。

「……ん、そういや……あんたはどうやって狩るつもりだったんだ? 操作魔法中だが」

「だから少数精鋭なんだよー、皆が駄目なようなら、その前に逃げないとねー」

「……ああ、なるほどね」

シビアな返しですが、いたって普通の事です。男は荒れ狂う波を見つめました。

「ひっひっひ……嵐で戦い辛いんじゃないかぁ?」

「アホ。ウィルオウィスプ無しでも勝てるわ」

「おお、こりゃ頼もしい……ん」

ゆらり。海面が大きく揺れました。

「! 来たみたいだねー」

「……おお、でかいな」

真っ黒な海面から、次々と巨大な肉の柱が出現します。一本、二本……八本。おまけに見覚えのある吸盤がびっしりと並んでいます。

そして、小山かと錯覚してしまいそうなほどの、巨大な頭が現れました。その目は明確にこちらに敵意を放っています。

「よーし、そんじゃあ一発……」

触手の一本に向かって飛びだした男は、魔力を込めた強烈な一撃を与えます。

……しかし。

「うおっ……おお!」

男はそのまま海面に叩き付けられてしまいました。凄まじい衝撃と共に、視界が真っ黒に染まります。

触手の吸盤は思っていたよりも強く、威力を全て殺されてしまったようです。

(……チッ)

「おいおい、あの人やられちゃったんじゃ!」

その瞬間、黒と紫の甲殻、赤い翼膜を持つ怪物が、海中から飛び出してきました。触手に捕まる前に、上手く脱出出来たようです。

「ひっひっひ、本気を出さないと勝てないのかのぉ?」

「うるせえ……海中だとブレス撃てねえだろ」

(嵐で大分弱体化するが……てめえを丸焦げにするくらいなら容易い)

男は大きく息を吸い込み、夕日が落ちてきたかと思うような、巨大な火球を放ちました。

「悪魔の魚」の親玉は、火球に呑み込まれ、その巨体を仰向けに倒します。これにて一件落着のようですね。

「ふう……お、嵐も丁度過ぎたか。これで終わりだな」

「おー! ブラーボォ! いいねいいね! よくやってくれた!」

「……ん、おいジジイ、何持ってんだ」

両手を上げて大喜びするサングラスの男とは対照的に、やけに大人しかった老人は、右手から何かをを親玉に投げました。

それは身体に触れた瞬間、凄まじい勢いで成長し、親玉の身体に絡みついていきます。そして鬼のような形相の顔を形作りました……これは。

「なっ!? て、てめえ、「鬼神ガジュマル」の種……どこでそんなもん!」

「ひっひっひ、さっさと倒しとくれぇ。ああ、炎は使うなよぉ〜」

あの種は「鬼ガジュマル」のさらに上、「鬼神ガジュマル」の種だったようです。目を覚ました瞬間、触れる物全てを吸収して成長する、かなり危険なモンスターです。

その根の粉末は、凄まじい秘薬となるのですが……おそらく酒に混ぜるためでしょうね。

「文字通りてめえが蒔いた種だろうが! 自分でやれ!」

「ああ、天下のジャバウォック様でも出来んか……そりゃすまんかったのぉ、ひっひっひ」

「……クッソジジイ――!!」

結局男は、炎を使わずに鬼神ガジュマルを倒す羽目になるのでした。


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