81: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:44:00.54 ID:vxIFxQsM0
卯月「Pさん、のあさんにとってわたしって、なんなんでしょう」
俺は、うまく伝えられるだろうか。
82: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:47:22.07 ID:vxIFxQsM0
すっかり夜が更けてから、俺は通い慣れた道を歩く。
あの晩のように、空は黒々と広がっていて、懐かしい気分にさえなった。
無骨な木製の扉を引くと、柔らかな光が暖かく迎え入れてくれる。
83: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:52:20.88 ID:vxIFxQsM0
P「出てやれよ、電話」
不思議に思いながら携帯を突き返す。
のあ「電話はあまり好きではないの」
84: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:54:16.85 ID:vxIFxQsM0
P「頼むから、もう少し用心してくれ」
のあ「善処するわ」
口ではそう言いながら、知らん顔で彼女はグラスを傾けた。
85: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:55:12.87 ID:vxIFxQsM0
のあ「……昨日、卯月に、尋ねたの」
のあ「私は、貴女に近付けたのかしら、と」
のあ「すると彼女は、とっくに追い越していると答えたわ」
86: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:55:59.93 ID:vxIFxQsM0
のあ「そこで、ようやく気付かされたわ」
のあ「私が、卯月の背中ばかりを見て、アイドルをしていたことを」
のあ「信頼できる仲間に囲まれて、日々お互いを高め合いながら、それでもどこかで彼女に追い縋っていたことを」
87: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:57:16.72 ID:vxIFxQsM0
彼女の内側を、はじめて見ることができたと思う。
どうしてだか俺は、プロデューサーとして、一人の友人として、彼女の苦しみや想いに対して、真摯に向き合えることが、嬉しくて仕方ない。
88: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:57:58.02 ID:vxIFxQsM0
P「卯月な。お前のお陰で、また夢が見つかったって言って、喜んでいたんだ」
P「学校の先生になるんだとさ」
そう言いながら俺は、卯月の顔を思い浮かべる。
89: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:59:18.54 ID:vxIFxQsM0
P「お前の歌を聴くと、元気が出るんだそうだ」
ちらりと窺った彼女の瞳に、涙がたたえられているような気がした。
90: ◆K5gei8GTyk[saga]
2016/03/25(金) 03:59:56.01 ID:vxIFxQsM0
短くはない期間にわたってこの仕事を続けてきて、確信を持っていえることがある。
アイドルというものに貴賤は存在しない、ということだ。
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