過去ログ - 西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
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10:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:18:05.59 ID:sOyMUoJv0
逸見さんはあの時、フラッグ車の砲手でしたから、落ちてゆくIII号がよく見えたのです。
後輩たちがどんな思いで落ちていったかも、きっとわかったはずです。
11:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:18:27.98 ID:sOyMUoJv0
病室を去る前、逸見さんは、お前が殺したんだ、と言いました。
それについては、私は何とも申し上げることはできません。
12:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:19:07.17 ID:sOyMUoJv0
私は病床で、病でもないのに臥せったまま、無為に退院までの日を過ごしました。
尋ねる人は不在でした。
ぼんやりと天井を眺めるまま、私も死んでいれば、と思いました。
13:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:22:08.27 ID:sOyMUoJv0
やがて退院の日が来ました。
迎える人も、不在でした。
もしかしたら、姉が迎えにきてはくれないかと期待もしたのですが、戦車で来られでもしたら卒倒していたでしょう。
14:名無しNIPPER[sage]
2016/04/01(金) 22:22:58.22 ID:cM/RpA5uo
期待
15:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:23:31.98 ID:sOyMUoJv0
家で私を待っていたのは、恥辱であり、面罵であり、地獄でした。
16:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:24:18.57 ID:sOyMUoJv0
私が玄関先で何も言えないで、変にもじもじしているのを一瞥した母は、
「入りなさい」
17:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:25:04.99 ID:sOyMUoJv0
暗がりを歩くようにおっかなびっくりと家に入る時は、とても敷居が高く感じられました。
18:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:25:44.18 ID:sOyMUoJv0
眼前に座る母は、和室の戦車柄の襖も相まって閻魔様のように見えました。
その傍に座っている姉でさえ、まるで地獄の悪鬼悪霊と見まごうほど恐ろしく感じられるのです。
19:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:26:32.44 ID:sOyMUoJv0
「よくもおめおめと顔を出せたわね、この恥曝し」
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