過去ログ - 西住みほ「堕ちていくほど、美しい」
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17:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:25:04.99 ID:sOyMUoJv0

暗がりを歩くようにおっかなびっくりと家に入る時は、とても敷居が高く感じられました。


18:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:25:44.18 ID:sOyMUoJv0

眼前に座る母は、和室の戦車柄の襖も相まって閻魔様のように見えました。

その傍に座っている姉でさえ、まるで地獄の悪鬼悪霊と見まごうほど恐ろしく感じられるのです。

以下略



19:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:26:32.44 ID:sOyMUoJv0
「よくもおめおめと顔を出せたわね、この恥曝し」


20:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:27:14.91 ID:sOyMUoJv0
おおかたそのようなことを言おうとしていたのか、はたまた私を労わる言葉をかけようとしてくれていたのかは、ついぞわからぬままになりそうです。


21:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:28:04.33 ID:sOyMUoJv0
「何故フラッグ車を放って救助に行ったの」

「...え、っと」

「貴女が助けに行こうと行くまいと、どのみちあの子達は死んでいたわ」
以下略



22:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:29:19.06 ID:sOyMUoJv0
母が私の心臓に金槌を振り下ろしました。

私は眼の前が暗くなりました。

がくりと項垂れ、全身をわなわなと震わせることはできても、なお言葉は出ず、身体も動きません。


23:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:30:09.47 ID:sOyMUoJv0
勝利のためならば、人死にさえ厭わないと言うのか。

それではまるで戦争ではないか。

できることなら、母の言葉を否定しとうございました。
以下略



24:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:30:47.39 ID:sOyMUoJv0
そうして何もかも葬り去ったのちに、火を以って西住家を灰にしてやろうとも思いました。

無論そんなことはできようはずもなく、唖のように黙り、瞽のように何も見ていない私を、姉が連れ出してくれました。


25:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:31:22.41 ID:sOyMUoJv0


部屋で私は、ぼこられ熊を抱きしめて、固まっておりました。

声は出ず、ただ涙だけが頬を伝います。
以下略



26:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:32:29.20 ID:sOyMUoJv0
しかしこれは天の道理が起こした運命なのだと気づかされ、私はどうしようもない虚無の思いを抱えざるを得ないのです。


27:津島[saga]
2016/04/01(金) 22:33:00.19 ID:sOyMUoJv0

お姉ちゃん、と声が漏れました。

痩せこけた心が絞り出した悲鳴でした。



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