過去ログ - 双葉杏「不労働讃歌」 -SS速報VIP

過去ログ - 双葉杏「不労働讃歌」

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38: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:39:02.21 ID:3MSzNgJk0
　
　私はお風呂の準備は面倒だけど、昔からお風呂に入ること自体は嫌いじゃない。
　
　全身の力を抜いて、ぷかぷかと体を漂わせていると、なんていうか、安心できるのだ。

以下略

39: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:40:44.11 ID:3MSzNgJk0
===　

　朝からひとっ風呂浴びた後、私は珍しく余所行きの服装で身を固める。
　普段なら襟の伸びきった、だるだるのシャツ一枚で過ごすけど、今日はなんとなく家でだらだら過ごす気分にはならなかった。

以下略

40: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:41:53.73 ID:3MSzNgJk0
　
　お財布持って、携帯持って。トントンとシューズを履くと、
　いつか買った安物のキャップをかぶって玄関を開け、振り返ることなくそのまま外へ出る。
　
「さぁて、どこに行こうかなっと」

以下略

41: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:44:16.67 ID:3MSzNgJk0
===

　マンションを出て、電車に乗って、街についた頃には、私の体力は既に限界を迎えていた。
　
　なんて根性のなさだと笑いたい奴は、笑ったらいい。反論する気力もない今ならば、その嘲笑も甘んじて受け入れようじゃないか。

以下略

42: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:47:16.05 ID:3MSzNgJk0
　
「大体さぁ、女の子らしい遊びってなんだよ……そもそも杏は、ファッションなんかに興味がないっての」

　そう。ここに来て浮上した二つ目の問題が、嗜好の相違。

以下略

43: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:49:32.63 ID:3MSzNgJk0
　
　当てもなくさ迷うこと数分。視界の中に、一軒のゲームセンターが飛び込んで来た。
　その時の私の気持ちは、まるで砂漠の中でオアシスを見つけた旅人のよう。
　
　ここなら、この場所ならばまだ私は優位を保てる――そんな風に考えたら、

以下略

44: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:50:45.86 ID:3MSzNgJk0
　
「はぁー、ホント助かったよ……あのまま外にいたら、自分がどうなってた事やら……怖い怖い」

　独り言を呟きながら、私は店内のゲームを物色していく。音ゲー、格ゲー、シミュレータ。
　メダルゲームは、良さそうな台がないからパス。

以下略

45: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:55:33.71 ID:3MSzNgJk0
===

　こいつ、ホントに人間か？
　
　クレーンゲームの筐体の前、今まさにゲームに興じる一人の女を目の当たりにして、

以下略

46: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:57:06.22 ID:3MSzNgJk0
　
　さらに、派手に人の目を奪う服装の次に気になるのが、その女の背の高さ。
　
　とにかく、デカイ。べらぼうにデカイ。
　それも「君、女の子にしてはおっきいんだねぇ」なんて呑気に笑って流せるレベルを遥かに超えていて。

以下略

47: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 20:58:18.32 ID:3MSzNgJk0
　
　そんな彼女が筐体を操作する度に、肩ぐらいまでの長さの、ウェーブがかかった茶色い髪がふわふわほわほわ揺れているんだから。
　
　余りにも日常離れした彼女の持つ、良い意味で近寄りがたい威圧感に圧倒されているのか、
　周りのお客はこの珍しい美人を遠巻きに眺めはするものの、声をかけるまでは出来ないようで。

以下略

48: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2016/04/05(火) 21:05:01.86 ID:3MSzNgJk0
　
「むむむむ……とーう！」

　レバー操作でクレーンを動かし、彼女が気合を入れてボタンを押す。
　すると三本ヅメの巨大なアームがずっ、と下に降りていき、目標のぬいぐるみの体をがしっと掴んだ。

以下略

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