過去ログ - 【ガルパン】西住しほ「おかえりなさい」
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132: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:17:12.75 ID:iF80Ipuz0

千代「.............。」

 千代の方もフラッグ戦を想定していたようだ。それもその筈、殲滅戦とは名前のとおり全車両を殲滅させられたら負けなのである。つまり戦車の台数がモノを言う試合であり、車両としての性能でも優っている大学選抜チームが負けるのは有り得ないのだ。千代はあくまで戦術的な戦いを望んでいた。『西住』の名前を冠する、しほの後継者の一人であるみほと戦術的に愛里寿を競わせたかったのだ。加えて不利な状況での全国大会決勝では隊長車同士の一騎打ちに持ち込み勝利したと人伝に聞いていた。だからこそ今回もそうしてくると読み、個としての能力も競わせられると考えていた。
 だが試合は殲滅戦であり劣った戦車8両に対して優れた30両の戦車である。結果は一目瞭然だ。千代も役人の意向に強い不快感を示して冷たい視線でモニターを見る。


133: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:18:08.17 ID:iF80Ipuz0

これは『西住』を嵌め、『島田』を貶めた侮辱行為だ。両家の家元たる二人は自分の流派を愚弄したあの男を許すはずが無い。モニターから視線を外すと無言のままに役人の居る設営テントへ向かおうとし、二人は立ち上がった。



以下略



134: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:18:56.14 ID:iF80Ipuz0
まほ『待ったーーーーーーーッ!』

 審判長の蝶野の合図で両チームが挨拶を終えようとするともう一人の愛娘の声が響いいた。娘の声を聞き我に返ると、しほは声の方向であるモニターへ視線を戻す。そこには4両の戦車を伴って大洗の制服を来たまほが居た。
 
まほ『大洗女子学園 西住まほ』
以下略



135: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:20:32.88 ID:iF80Ipuz0

 しほは驚き口を開けたままモニターに釘付けになってしまった。質実剛健なまほがこんな大胆で豪快なことをするとは思わなかったのだ。昨夜まほが家を出たのはこの為だったのかと驚愕した。彼女もまた母の血を色濃く受け継ぎ、堅いところが有る。しかししほに似ているから妹を溺愛し、妹の為に行動したのである。予想外な展開により大洗の戦力は重戦車を含む4両の加算で12両となった。増援は続いていく。
 まほ達に続くようにサンダース・聖グロ・プラウダ・アンツィオ・継続・知波単と大洗に縁のある各校から増援が現れたのだ。総車両は大学選抜と同数の30両までになったのだ。


136: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:22:36.56 ID:iF80Ipuz0

 まるで演出のような展開に観客は湧き、試合も始まっていないというのに大盛り上がりである。一方呆気に取られていたしほだったが状況を理解し小さく笑いだした。その少し先で口元と腹を抑えて島田千代が笑い崩れている。先程までの怒りも嘘の様に消え、二人は再び試合に関心を戻し席についた。
 それにしても今の若手選手は大胆なことをするものだ。大洗と大学選抜の試合が決まったのは昨日のことで有り、それをいつ知ったのかは分からない。しかし一日で短期転校の書類を用意し戦車を持ってきたのだ。大したものである。これだけ多くの協力者・仲間を得たのもみほの人徳によるものだろう。誇らしい。本当にあの子の真価を見誤っていたようだ。あの子の強みは強い絆の仲間と戦うことであり、その仲間は増え続けていくのだろう。その道は正しかった。なぜならその道を進んだことで今こうして、各校の隊長格達がみほの元に集まり共に戦ってくれようとしているのだから。
 こうして大学選抜対大洗女子学園は、大学選抜対高校連合という形にその様相を変えた。



137: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:23:27.50 ID:iF80Ipuz0

――――――――――――――――――


 試合が始まるとしほと千代はモニターを注視していた。経験はともかく車両数は同数となり、限りなく条件は近くなったのだ。であれば勝敗は隊長の指揮能力によって決まるのだ。
以下略



138: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:24:16.51 ID:iF80Ipuz0

 試合が始まると3中隊に別れたみほ達は高台を取るようだ。戦術的に有利になる地形なので抑えるのは有効である。しかしそれは当然向こうも承知だろうし、何よりそれは『西住流』のような進め方であった。嬉しくも思ったが同時に違和感を持って試合を見ていると、モニターのスピーカーとそれに遅れる形で遠方より爆音が響いた。その衝撃は遠く離れた観覧席でも、空気の揺れを感じるほどのものだった。


139: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:25:48.69 ID:iF80Ipuz0

 優位な高台をとったのにも関わらず、どこからともなくその開けた高台に高火力砲撃が打ち込まれてくる。更に前方と後ろからは半包囲までされ高校連合の中央中隊は追い詰められていた。早くも4両が落とされる。中央中隊はみほのいる中隊と合流を図るべく斜面を全速前進する。開始30分程で立て続けに撃破される高校連合。しかし追撃部隊の手は緩むことはない。
 そんな心象を語る様に暗雲から雨が降りだした。仲間を逃がすために追撃する敵に特攻を仕掛けた3両のおかげで、中央中退は辛くも退避に成功する。この際2両を仕留める。


140: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:26:43.47 ID:iF80Ipuz0
 強力な重戦車を立て続けに失い、高校連合は開幕戦から大打撃を受けたのだった。この戦力では『西住流』のやり方では勝てないだろうと千代は笑う。雨の中でも傘を刺し悠然とする様からは余裕が感じられた。彼女は『西住流』をよく知っている。同数からならいざ知らず、こうなってからでは正攻法で負けることはないだろう。そんな考えからの笑みであった。軽く振り向き見えたしほの表情も険しいものに見える。このまま徐々に削りきるだろうと勝利を予想しモニターへと向き直るのだった。

千代「....」フフ

しほ「.....」
以下略



141: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/09(土) 22:28:40.87 ID:iF80Ipuz0
 しかし千代の読みは外れていた。土砂降りの中、傘を刺さず険しい表情でモニターを見るしほ。傍から見れば娘のチームが大打撃を受けて負けを感じて落胆しているのように見えるかも知れない。だがしほはみほの勝利を未だ疑うことはない。彼女の険しい表情はみほが『西住流』のやり方だったならば、『島田流』のこのチームにおそらくこのまま負けただろうという自分の予想に対するものだった。それは戦車乗りとしての仮想戦をイメージした結果であり、その予想が不愉快だったための表情であった。
 現状手痛い追撃を受けたが、逆境にはあの子は慣れたものだろう。むしろそういった状況下でこそあの子は本領を発揮する。みほはみほらしい戦い方をすればいいのだ。あの子がここからどう状況を打開するのかを考え思考に集中する。そうして彼女の顔はまた一段と険しくなるのだった。


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