過去ログ - 【ガルパン】西住しほ「おかえりなさい」
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47: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:36:26.00 ID:RVCvaGcC0

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 完璧な『西住』として振舞おうとしていたのは、『西住』であれと強く意識していたからだと気がつけた。本当の体現者なら考えるまでもなく、その振る舞いが全て『西住』となるはずなのだから。
 私は娘達だけでなく自分の事もわからなくなっていたみたいだ。家元を襲名しその名前の重さとプロリーグと世界大会に関わる大役は、知らないうちに私を追い込んでいたようだ。
以下略



48: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:39:40.06 ID:RVCvaGcC0

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【決勝戦:黒森峰―大洗戦会場(東富士演習場)】

以下略



49: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:41:16.42 ID:RVCvaGcC0

 試合が始まる。元は自分の所属したチームであり、身に染みている西住流に忠実な黒森峰である。その戦法は完全統制された陣形による包囲からの圧倒的火力による短期決戦だ。例えそれを知っていたとしても崩すのは容易ではない。みほは確実に正面戦闘を避けるだろうが、そこからどう動くか。数の優位性を殺すために地形を利用するのはまず間違いないだろう。
 対するまほもみほに手が割れていることは承知のはず、策があろうとそれを実行させる前に終わらせようとするだろう。接敵の状況がどちらの思い通りになるかで、試合運びは決まると予想を立てた。
 モニターの黒森峰の動きを見てまほも自分と同じ考えだと理解する。虚を突かれるであろうみほの対応力が試される。



50: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:43:47.48 ID:RVCvaGcC0

 まほが取った作戦は単純なものだった。おそらくみほが利用するであろう経路に最短で迎うためショートカットを用いたのだ。しかしその抜けてきた地形は視界の悪い、加えて樹木の生い茂る森。早期の接触を考えるとしてもこのマップの森林は大抵迂回を選択した方が、早く進める。それはこのマップの森林は障害物となる上に、鬱蒼とした木々による視界不良で並みの走行技術では却って時間をくうものだからだ。一部の熟練者だけが抜けてもそれでは敵を殲滅できないので意味がなく、故に森を抜ける選択は大抵のチームはしないだろう。みほもそう予想していたのだろう。
 しかしこのチームは黒森峰だ。全ての乗員がそれを可能とするだけの技術を持ち、その森林を陣形を保ったまま全速で突き通って来たのである。そうして見事に側面をとったのである。
 
しほ「(これが黒森峰と西住流よ、みほ。並みのチームと同じに考えているようでは到底かなわないわ)」


51: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:46:30.04 ID:RVCvaGcC0

 陣形は乱れフラッグ車は守られていない。既にティーガーUはみほのフラッグ車に砲塔を向けていた。ここで終わるのかに見えたが、しかしそれを察知したのか三式が全速後退し盾になるように射線に飛び込んだ。咄嗟の判断で身を挺して庇うとは大したものだと感心する。大洗は新設されたチームだと聞いていてプラウダ戦を見ても、まだまだだと思っていが経験が不足しているだけで個々の能力は高いのかもしれない。
 三式を犠牲にしつつも他車両は無傷で離脱に成功してみせた。みほは虚を疲れても動じず冷静に指示しているようで、まほの言うとおり対応力は中々のようである。

 さて方角からしてみほが目指しているのは高台にある丘のようだ。高地に陣取り上から砲撃するのだろうが、却って的になるのではないか。それにまほが登頂をよしとするとは思えない。
以下略



52: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:47:20.61 ID:RVCvaGcC0

しほ「(煙幕によって被弾率を下げるつもりなのかしら、でも目的地がわかっているならば煙幕の切れ目を狙えばいいだけであまり意味がないわね)」

 Pティーガーがいる時点で早急な登頂はできないでしょう。まほもそれを読んで無駄な砲撃をせず煙幕が晴れるのを待っているようだ。ところが晴れてみると
大洗は山頂付近まで上り詰めているのだから驚きだ。
以下略



53: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:49:50.32 ID:RVCvaGcC0

 大洗は各車両をワイヤーで連結する事でPティーガーの速力を補助したのだ。これには正直驚いた。さらに立て続けに煙幕を炊くと車両と山頂部を広く隠してきた。広範囲に広げた白煙にみほが何かを仕込んでいると察したまほは、榴弾にて煙を吹き飛ばした。そこに顕になったのは山頂部に土壁を盛り、高地から見下ろす形の稜線射撃を可能とする陣形だった。丘を取り囲むように展開する黒森峰だったが、これを崩すのは時間が掛かかるだろう。
大洗は高台から一方的に砲撃ができ、土壁により車両の半分は隠されて守られていた。加えて重戦車を運用してきた黒森峰は丘を上がるのに時間がかかる。
 よく考えたものだ。ここまでこの戦力差で有利に立ち回れるとは思いもよらなかった。
 


54: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:51:45.20 ID:RVCvaGcC0

 それでもまほは動じることなく装甲の厚い重戦車を盾にし、じわじわとその距離を詰めていく。対応力に優れているのはみほだけではないのだ。
 しかしみほの作戦はまだ終わらなかった。別働隊として先程速力を削ぐ妨害を行っていたヘッツァーが、ようやく丘の中腹を超えた黒森峰の車両間に飛び込んできたのだ。まるで煽るかのように車両間を走り回る。撃破しようにも同士打ちを恐れて砲撃できず、その隙に大洗の本隊から射撃で討ち取られる。陣形は乱れ大きく混乱していた。
 それに合わせるように一際大きく乱れた箇所を、まほと同じように重戦車のPティーガーを盾としながら大洗全車が全速で下っていく。あっという間に包囲陣形を抜けて颯爽と逃げていってしまった。気が付けばヘッツァーも居らず完全に出し抜かれていた。



55: ◆5yXN2jIX2Y[sage saga]
2016/04/03(日) 12:54:09.58 ID:RVCvaGcC0

 奇策の連続に加え追い詰められたところからの大脱出に会場は沸いていた。圧倒的な脅威に対して臆することなく、むしろ絡めてを用いて翻弄するみほに私は感嘆した。西住流としてではなく自由に指揮するあの子の実力を垣間見て、ここに来てようやく今までの彼女への評価を改めたたのだった。
そして同時にこの子が黒森峰に残り、高火力の戦車軍を自由に指揮していたらどうなっていただろうか。みほを改めて見直したことで、一人の戦車乗りとしてのみほを私は素直に認めることができた。



56:名無しNIPPER
2016/04/03(日) 13:31:47.68 ID:OePaPVWq0
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