3: ◆wOrB4QIvCI[saga]
2016/04/04(月) 03:33:55.82 ID:morH4XlL0
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穂乃果「ごめん、なさい……」
目の前の人が泣きそうになりながら私に頭を下げてくる。ああ……意識が朦朧とする。笑ってくれれば私も笑顔になって、沈んでいる時は私も沈んで行く。まるで魔法でも使っているみたいなその人の答えは、私の思考回路を全て奪っていった。
もしかしたら、大丈夫なんじゃないか、特別な存在になれるんじゃないかって、不安の海に小さく浮かんでいた私の淡い期待ごと、夏の暑さに葬り去った。ああ、私は魔法をかけられた。今やその人が笑おうが泣こうが、私のこの気持ちを奪ったことへの、憎しみへと変わるだろう。
欲しい。欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい!!! 穂乃果のことが、たまらなく、欲しかった。全てを失ってでも、欲しかった。
自己中心的? 仕方ない、それが私だもの。ああ、なるほど。こんな自己中心的な私だからこそ、目の前の人はそういう答えを出したんだ。
だとするならば――それも仕方ない。
すぅっと、膨らみかけた憎しみの感情が縮んでいく。その中心に現れたのは、また別の感情。自分を守ろうとして、自分を良く見せようとして、私が普段絶対に人に見せない感情がむくむくと膨らむ。それは真っ黒な雲だった、私の中をそれが支配した時、たまらず目から液体が溢れ出したのは、心が泣いているって証拠。
ああ、どうしよう。こんな問題に対する問いを用意していない。こんなになるだなんて、思っていなかった。傲慢ね。勉強は得意、それでもこんなこと、習ってないし勉強したことはない。
穂乃果はそんな私を見て、また小さくごめん、と呟く。答えが出せなかったことじゃない、結果が伴わなかったことでもない。目の前の人が私の自己中心的な想いをぶつけたせいで、きっと苦しんでいる。私は穂乃果のことを思って想いを伝えるべきだったのに、間違ってしまった。それが、なによりも辛かった。
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