4: ◆8dLnQgHb2qlg[sage saga]
2016/04/05(火) 13:20:16.14 ID:lqZk7NNG0
「アイドルは孤高であっても孤独であってはならない。最強であっても無敵であってはならない」
お猪口を眺めながら、黒井社長がポツリと呟いた。
「あれは、まだ私が若かった頃だ……」
「あの時のことかい?」
「ああ、そうだ。私達は同じ会社で競い合っていてね。高木の奴はあるアイドルのプロデューサーをしていた」
大きく息を吐いて、続ける。
「才能はあった。だからこそ、だろうな……」
何かを思い出すように細められた目は少し優しい。
「当時は日高舞の天下だ。どれだけ才能があろうと、どれだけ努力しようと、天の時を得ることはできなかった。運が悪かったとしか言いようがない」
あの時代のことはよく知っている。
今の形のアイドルが一般になった切欠がそこにある。
日高舞の圧倒的な力が世間を動かしたからこそ。
「結局は成功と言えるが十分とは言えない。そこで燻っていた彼女は高木の前から姿を消したよ。夢の先が見つからないと書き残してね」
華やかな時代だった。
それだけに、その影でひっそりと夢破れた者は多かったのだろう。
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