166:名無しNIPPER[saga]
2016/04/26(火) 23:32:30.58 ID:gheRICtno
それから俺達は他の人の群れに混ざって普通に観光をした。
小島の上に建つ仏堂へ繋がる橋の橋桁から海が見えるのに驚いて、少し尻込みした俺を、るーが笑った。
ついでにおみくじを引いたらみんな大吉で、「大吉しか入ってないんじゃない?」とちい姉が真剣そうな調子で言った。
「少し散歩でもするか」と言った遊馬兄についていった先には、例の水族館の跡地と広い公園があって、家族連れが和やかに遊んでいた。
「せっかくだから」と言って遊馬兄が近くの寺院まで連れて行ってくれた。参道の杉木立は圧倒されるくらいに高かった。
「秋になると夜にライトアップされるんだよな、ここ。来たことないけど、ちょっと気になる」
遊馬兄がそう呟いたのを、ちい姉が「ふうん」という感じで聞いていた。何か考えていたのかもしれない。
「せっかくだから」と遊馬兄はまた言って境内に入って、しばらく庭園や建築物を眺めた。
ひとしきり中を覗いてから外に出て、今度は参道の裏手の道を通って、昔から残っているという洞窟やら遺跡やらを眺めて歩いた。
あたりは不思議と静かで、人気もほとんどなかった。
「……と、ぼんやり歩いているだけでけっこう暇つぶしになる不思議なスポットだ」
海岸通りに戻って遊馬兄がそう呟いたとき、たしかにかなりの時間が経過していた。秋だったらもう暗くなりかかっている時刻だ。
「……」
「何か言いたげだな、タクミ」
「……いや、楽しかったけどさ。十代や二十代の若者が来るとこかな、ここ」
「俺はけっこう楽しいよ」
「わたしもけっこう楽しい」とちい姉が言う。
「わたしも好きですよ」とるー。
「……いや、俺も好きだけどさ、こういうの見るの」
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