過去ログ - 屋上に昇って.
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23:名無しNIPPER[saga]
2016/04/06(水) 00:34:18.98 ID:IXgA3K/jo

「……でも、ずっと剥がれないんだ」

 知ってしまったことを、後悔するわけじゃない。
 それなのに、知ってしまってから、俺の視界にはいつも、とれない曇りのように何かが張り付いたままだ。

 なくなってくれない。

「でも、よだかさんは、もう前を向いてますよ」

「でも、よだかの母親は死んだ」

「……」

「……たとえば俺が生まれなければ、父さんだって結婚を急ぐことはなくて。
 そしたら、よだかの母親は、父さんに妊娠を伝えられたかもしれない。
 そうしたら父さんだって、よだかの母親の方を選んだかもしれない」

「……そうかもしれないですね」

 でも、とるーは続ける。

「そのほうがよかったって、思うんですか?」

 わからない、と俺は頭を振る。

 目の前の水面は、ただ揺らめいている。




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