364:名無しNIPPER[saga]
2016/05/17(火) 23:50:41.62 ID:Fxr7uh8Eo
「来年だ! 来年の文化祭にしよう。そうだよ、それがいい」
その言葉に、みんなが顔を見合わせた。
「どっちにしても一月や二月じゃろくな演奏できそうになかったんだ。たっぷり一年練習して、来年にしよう」
肩透かしをくらって腹を立ててはいたものの、その言葉に異論を挟む奴はいなかった。
「……来年」
「来年!」
ゴローは力いっぱい断言した。
そういうわけで、俺達のバンド演奏は来年に持ち越しになった。
そんな顛末を部活の日にみんなに話したら、案の定大笑いされた。
ひとり部長だけが、「来年、わたしいないんだよね」と、どこか寂しそうに呟いていた。
みんながそれを聞いて黙ってしまうと、彼女はちょっと嬉しそうに笑って、
「でも、見に来るよ。楽しみにしてる」
そう言った。俺たちは頷いた。
ゴローが佐伯に告白したのは、そんな話があってからすぐのことで、彼はあっさり振られてしまったらしい。
「しばらく旅に出るからさがさないでくれ」と言い残してからさらに一週間後、彼は北海道のおみやげを持って俺の家へとやってきた。
「だだっ広い平野を見てきた」
きらきらと目を輝かせてそう語る彼は、いつもどおり元気そうに見えた。
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