68:名無しNIPPER[saga]
2016/04/13(水) 00:57:37.71 ID:i6zLcA0Oo
佐伯は、静かにシャボン玉を吹いてから、ボトルとストローを置いて、振りかぶった。
手の中には鍵がある。
「えい」
と小さな声をあげながら、佐伯の手から銀色の塊が飛んでいく。
俺はその様子をただ眺めていた。
「じゃあなー、元気でやれよー」
気の抜けた声で、佐伯はフェンスの向こうにそう呟いた。
「……よかったの?」
「旅する鍵だから」と佐伯は言った。
「わたしはもう卒業。たぶん、必要としてる人の手に渡る。そういうふうにできてるから」
猫みたいにぐーっと伸びをしてから、佐伯はどこか爽快そうに笑った。
「さーて、なんか、楽しいことしたいなあ」
「……な、佐伯」
「なに?」
「鍵、開けっぱなしになっちゃわない? 先生たち、気付くんじゃ……」
「……あ」
俺たちはとりあえず逃げた。
それが最後だ。東校舎の屋上に昇ったことは、それ以降は一度もない。
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