過去ログ - 屋上に昇って.
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70:名無しNIPPER[saga]
2016/04/13(水) 00:59:03.06 ID:i6zLcA0Oo

 俺はさすがにどうしていいか分からなくなったけど、ここまで来たらなかば意地でついていく。

 斜面にやられて転びそうになりながらも、俺はゴローについていく。
 やがて、彼の自転車は止まった。

 小高い丘の上だった。小さな公園のようになっている。柵があって街を見下ろせるが、近くに家があまりないため、利用者はあまりいないようだ。

 ゴローはそのはずれの方に、いつのまにか鞄に入れてきたらしい移植ベラで穴を掘り始めた。
 深く深く穴を掘る。その様子を俺はただ黙って眺めていた。

 ブランケットに包まれた三毛猫を、ゴローはそこに埋めた。

「不法投棄だ」とゴローは小さく呟いた。

「燃えるゴミだ」と。

 俺は何も言わなかったし、ゴローもそれから何も言わなかった。
 空っぽのケージを自転車の籠に突っ込むと、ゴローはそのまま何十分も黙っていた。俺も口をきかなかった。
 
 泣きも笑いもしなかった。そのうち空が茜色に染まり始めた頃、ゴローは「帰ろう」と言った。
 たぶん、本当はもっといたかったんだろうと思う。俺に気を使ったのだ。それでも俺はそこにゴローひとりを残しておく気にはなれなかった。

 頷くと、彼は寂しげに笑った。

 帰りは行きよりもずっとゆっくり走ったせいで、かなりの時間がかかってしまった。
 途中で夕立に降られて、ふたりで制服のままびしょ濡れになった。
 
 アスファルトを叩く雨音は強くて、いろんなものをかき消してしまう。
 前方を走るゴローが雨の中で叫んでいるような気がした。気のせいかもしれない。そういうふうに感じた。

 遠くで雷の音が聞こえた。ペダルを漕ぐ足が滑った。

 空はやがて他人事みたいに晴れた。手を繋いだ姉弟が通りすがりに俺たちを見て、「びしょ濡れだ」と言った。
 それから俺とゴローはろくに話もしないで別れた。家に帰ると静奈姉がいて、ずぶ濡れの制服を見て呆れた顔をした。





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