79:名無しNIPPER[saga]
2016/04/16(土) 00:56:12.54 ID:5Sr7dpy7o
◆
「名前を呼ぶこと、だと思う」
部長は、いつか、そう言った。
去年の秋だったと思う。部室には俺とゴローと、高森と佐伯と、部長がいた。
部長はまだ、部長になったばかりだった。
「たぶん、名前を呼ぶこと」
「……名前、ですか?」
「うん。比喩だけど、名前」
「……どういうこと、ですか?」
「えっと、つまりね、たとえば今ここでわたしたちが、何か大きな災害に巻き込まれて、全員、死んでしまったとするじゃない?」
そのたとえに、俺達は沈黙した。
「何百という人が死ぬとして、わたしたちは、その数字の中の、何百分の一になるとするじゃない?」
その死を、誰かがあとになって思い浮かべるときに、
たとえばの、話だけど。
「『かわいそう』とか、『未来ある若者が』とか『これから人生楽しいことがあるはずだったのに』とかさ、
そんなふうに言われるとしたら、わたし、気持ち悪いなって思うの」
とても個人的な感覚なんだけどね。彼女はそう付け加える。
「気持ち悪い……うん。気持ち悪いって、思う」
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