過去ログ - 屋上に昇って.
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79:名無しNIPPER[saga]
2016/04/16(土) 00:56:12.54 ID:5Sr7dpy7o



「名前を呼ぶこと、だと思う」

 部長は、いつか、そう言った。
 去年の秋だったと思う。部室には俺とゴローと、高森と佐伯と、部長がいた。
 部長はまだ、部長になったばかりだった。

「たぶん、名前を呼ぶこと」

「……名前、ですか?」

「うん。比喩だけど、名前」

「……どういうこと、ですか?」

「えっと、つまりね、たとえば今ここでわたしたちが、何か大きな災害に巻き込まれて、全員、死んでしまったとするじゃない?」

 そのたとえに、俺達は沈黙した。

「何百という人が死ぬとして、わたしたちは、その数字の中の、何百分の一になるとするじゃない?」

 その死を、誰かがあとになって思い浮かべるときに、
 たとえばの、話だけど。

「『かわいそう』とか、『未来ある若者が』とか『これから人生楽しいことがあるはずだったのに』とかさ、 
 そんなふうに言われるとしたら、わたし、気持ち悪いなって思うの」

 とても個人的な感覚なんだけどね。彼女はそう付け加える。

「気持ち悪い……うん。気持ち悪いって、思う」




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