過去ログ - モバP「二兎追い人の栞」
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144: ◆m03zzdT6fs[saga]
2016/05/11(水) 04:44:35.45 ID:B4TJufEpo
『文香さん、一つお話があります』

「……はい、何でしょうか」

 心なしか、緊張してきた。文香さんも緊張しているように見える。幾らか、顔が赤くなっている気もする。

 何から話せばいいのだろうか。そうだ、ひとまずスカウトの話からしなければ。……そのあと、文香さんの真意を聞こう。

『その……アイドルに興味はありますか』

「アイドル……ですか? ……アイドル雑誌は、流石に取り扱ってはいませんが」

 少し、文香さんの表情が怪訝なものになる。それを受けて、僕も少しだけ小首を傾げる。本の話ではなかったのだけれど、伝わらなかったのかもしれない。

『ああ、いえ。本の事じゃなくて、実はとあるプロダクションに就職することになりまして。それで、そこの社長から文香さんをスカウトしてくるように、と』

「……そう、でしたか」

 すると途端に文香さんの表情が落胆の色で染まる。次いで、どこか怒りというか、憤りを多分に含んだ声で。

「お話というのは……その、アイドルのスカウトの事だったのですね」

 僕は一瞬訳が分からなくなって、少しだけ狼狽えてしまう。……何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。

 それとも、文香さんはアイドルが嫌いだったのかもしれない。ぐるぐるといろいろな思考が頭を支配する。――そんな混乱の極みにあった僕だけれど、たった一言。



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