過去ログ - 男「とある平日、春の夜に」
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6:名無しNIPPER[saga]
2016/04/13(水) 22:40:46.45 ID:rBGFuxEt0
たん たん たん たん

男(散歩は好きだ)

男(普段は見えない部分が、のんびりと歩いていると突如見えてくる)

男(僕らが忙しさに追われ、見えていない部分。それが浮き彫りになるから不思議なものだ)

男(それが夜だと、一層景色が違って見える)

男(いつからだろう? 夜が平気になったのは)

男(子供の頃は、真っ暗な景色が、ひどく怖かった)

男(見知った道でさえ、未知の世界のように感じていた)

男(友人と行った知らない場所。夕方になり、陽が暮れかけるだけで、不安に心を掻き毟られていた)

男(家にたどり着き、家族の顔を見るだけで、ほっとしたものだ)

男(あの時から、どれだけの時が経ったんだろう)

男(勿体ないな、あの学生時代。やる気が起きなくて、ただぼんやりと日々を過ごしていた)

男(何をするにも自由だったあの時代。あの時に、何か大切な事を忘れてきてしまった気がする)

男(子供から大人になるその隙間。僕らは、その隙間に何かを置いてきてしまうのではないか)

男(……だけど、きっと、それでいいんだろう)

男(そうして失ったものを、僕らは時折懐かしむ)

男(それが出来ているうちは、僕らの心には余裕があるはずだ)

男「……さて、そろそろ戻るか」

男(静かな世界。春の夜の暖かさに包まれながら、僕は一人、歩き出した)


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