過去ログ - 男「春から大学に通うはずがどうしてこうなったのか」
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8:名無しNIPPER[sage]
2016/04/17(日) 18:25:17.53 ID:14IsBoNTO

 そう、信じられない話だけど、どうやら僕は……いや、ここに居る人間全員が既に死人らしい。

 聞いた瞬間は取り乱した。そらそうだ、僕自身が死んだ事を思い出せないのだから。死んだと聞かされて「はい、そうですか、なるほど」と聞き分けるほど利口ではない。

 でも、さっき金髪が助けてくれなければ僕は多分拳銃で頭を撃ち抜かれていたことだろう。

 高校生が銃を持っていること。寝ていて気付いたらあの用具倉庫に居た事。そして、あの赤い少女の言葉。

『死体と話す趣味も、無い』

 取り乱しながらも状況を整理していくと、少なくともここは僕が知っている地元では無い事が分かる。

 そして無償で僕を助けてくれた金髪が、そんな突拍子も無い嘘を吐くとは思えない事。

 だから僕は、仮にではあるが、今の僕が既に死体であるということを飲み込んでいる。

「名前っていうのは生前のモンだ。死体が名乗るのはこの世界で禁じられてるのさ」

「その、さ。一回聞いたけどあんまり理解出来てなくて……この世界って、一体何なんだ?」

「あぁ、まぁ一回聞いて全て理解出来る訳ないよな。いいよ、もう一回説明してやる。質問は都度しろ。」

 納豆卵かけご飯、略してNTKGの残りを一気に平らげた金髪は、性格に反して至極丁寧に、ゆっくりと説明してくれた。

「天国や地獄ってあるだろ? あれがここだ。ここは死者の集う世界なのさ。んで、殺しあってる」

「……天国や地獄にしては随分その、生活感というかリアルというか、何か印象と違うんだけど」

「んー、まぁ天国地獄ってモンは生きてる人間様が勝手に考えた作り物だからな。的を射てたのは死後の世界があるって点だけってこった」
「まぁ最初から一気に詰め込む必要も無ぇし、後で詳しく天使達に説明してもらえるだろうから詳しいことは省く。これから取るべき行動と覚えとくべき事だけを教える」

「天使ってあの天使?」

「あとだ、あと」
「とりあえずそうだな、これから取るべき行動だけどな。まずはプレイヤー名の決定と能力の選定だな。これをしねぇと、一時間も経たねぇうちに……分かるだろ?」

 脳裏に倉庫での出来事がフラッシュバックした。金髪は茶化すようにニヤけながら言ってるが、僕的には冗談になってない。全力で頷いた。

「プレイヤー名は生前の名前に関係なけりゃ何でもオッケーだ。大抵の奴は自分の外見や、好きなモンを名乗ってる。あたしみたいに金髪って感じの奴もいりゃ、ギターが好きだからギターって着けてた奴もいる」
「あ、いや。ギターの場合は『居た』が正しいか。因みに既に誰かが名乗ってる、名乗ってたのと同じ名前には出来ないぜ」
「因みに、お前を襲った奴は赤髪って奴だ」

「赤髪……」

「基本的に、単純な名前であるほどもう余ってないぜ」

 なるほど。確かに僕も、何も知らなければとりあえず黒髪やら学生って付けようとするかもな。

 そこで純粋な疑問が生まれる。

「あれ。と言うことはもしかして……」

「気付いたか? そうだ。絶対覚えておくこと、それは単純な名前ほど長いことこの世界で生き延びてる。単純な名前の奴は強いってこった」

 飽くまで他人事の様に言う金髪。

 生き延びてる、って事は逆を返すと……いや、これはまぁ……置いておこう。今言った所で後回しにされるだけだろう。

 話を聞きながら進めていた箸が、丼の底をつつく。いつの間にか食べ終わっていた様だ。

「んじゃま、善は急げって事で行くか。お前の名前を付けに」

 立ち上がって「んー!」っと伸びをする金髪。よくよく見るとまぁまぁの発育具合なのが分かる。

 せめてもと、金髪の盆も近くの食器返却口に返して、先に出口へ向かっていく金髪を追い掛ける。



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