過去ログ - 唯「天使再来襲」
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12:名無しNIPPER[sage saga]
2016/04/17(日) 22:50:49.05 ID:skFt6CMPo


ひとりの天使が誰かの家をノックしていた。
りっちゃんたちと別れて、家までの最後の直線を早歩きであるいてたとき。
空には天国が浮かんでいる。
天国は幾何学的な途方もなく大きいひとつなぎの雲だった。でっかいはんぺんを浮かべたようなものって言う人もいるし、アルビノの女の子のお腹みたいだって言う人もいる。
こん。こん。こぉぉん。
静かな早夜の町に、天使の来襲音は遠くまで響く。
人々が玄関の戸締まりを確認しているようすがここまで伝わってくるような気がした。
鍵を開けておくと天使たちは家に入ってきてしまう。
ノックして誰も出てこないと。
誰も出てこないのに部屋の明かりがついていると。
別に天使たちの肩を持つわけじゃないんだけど、天使にだって悪気とかそんなにあるわけじゃないんだと思う。
ただ天使たちは人間に祝福を与えたいだけなのだ。
だけど問題は、それが人間にとってはもう必要ないものだってこと。
ずっと昔の、天使たちが再び現れるまで、図書館の端っこでほこりをかぶっていたこんなお話がある。
まだ天使と人間が共存していた時代、天使は人間にいくつものすばらしい知恵とものを授けた。
貝殻はお金で、鳥の羽は美しい装飾品で、知恵は財宝だった。
天使は人間に持てるものすべてを与え、人間たちもやがてほんのちょっとだけ進化した。その結果いつの間にか人間は天使より偉大になってしまった。100足す1は101であり、100より101のほうが少し大きい。なぜなら天使とは永遠であり、永遠に生きるの者の時はとどまり続ける。新しかったはずの知恵はやがてより複雑な叡智へと変化し、銀は安価で鋳造されお金は紙切れに取って代わり、人類は神様のおわします雲を突き破って月に立った。天使は永遠だったけど、完全じゃなかった。永遠に不完全だった。
そういうわけで、いまでは、天使の授けるものをありがたがるものは誰もいない。それはもうずっと昔に受け取られたものであり、過去の遺失物、がらくただったのだ。
再び地上に現れた天使は、ずっと昔人間が喜んで受け取ってくれた物を、いまでもおなじように与え続けようとしているのだ。
こう考えるとなんていうか天使たちもけっこうかわいそうっていうか、ちょっと悲劇的だな。
わたしはこういう話にかなり弱い。捨てられた子犬の話とか、「トイ・ストーリー」とか。



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