過去ログ - オッサン勇者と少女魔族が世界を旅する話
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11:名無しNIPPER[saga]
2016/04/18(月) 01:17:40.64 ID:ZyCwTMFeo
勇者と呼ばれた男が王都から魔王討伐に出立して十三年の時が流れていた。
いまだ人間と魔族の敵対は熾烈を極めていたが、ほんの二年程前から魔族の侵攻が弱まっていた。
二年前。勇者が魔界に繋がると言われる島に最も近しい村で目撃された。
「これから魔界に行く」と王都への言伝を村の長に頼んだ後姿が、人々の知る最後の勇者の姿である。

その一年後。王都は初めて、魔族に簒奪された地を奪還することに成功する。
理由はわからないが、目に見えて魔族の侵攻が鈍り、なによりも侵攻を統括する敵将が弱体化していたのである。
吐き出す火球も、放つ爆破魔法も、氷結魔法も、雷撃魔法も、すべての威力が数段落ちていた。
敵将の弱体化は魔族側にとって大きな誤算であったらしく、後退し敵将は簒奪した地に築いた居城に籠城を決め込んだ。
王都内部は、これを罠とみるか好機とみるか意見は真っ向から対立し割れたものの、軍部の独断行動により敵将を追い詰め、ついには討ち倒すに至る。
この事変を契機に王都は、防衛主眼の方策から積極奪還へと姿勢を翻し、次々と魔族に撃ち滅ぼされた大地を奪い返していった。
その後わずか一年という期間で、奪われた地の半数を取り返し、着実に復興への道を歩み始めた。

魔族との戦いに勝利を重ねるうちに、人々の間で噂が飛び交うようになる。

曰く、魔族が弱体化したのは勇者が魔王を滅ぼしたからではないか。
曰く、魔族の統制が弱まったのは、勇者が内部で暴れているに違いない。
曰く、勇者が今も魔族を討ち滅ぼす戦いをしている。

様々な噂が飛び交ったがその真偽を確かめる術はなかった。
勇者の凱旋を皆待ちわびた。
だが初めて魔族に奪われていた地を奪還したその日から、二年経った後も勇者が戻ってくることはなかった。


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