100: ◆9W6PAVDo7.[saga]
2016/05/09(月) 23:52:35.41 ID:M+NVgLGa0
久しぶりの都市の腐った匂いだ。そう感じたハンターは、いつの間にかこの匂いに心が躍るようになっていた。いや、それとも血を滾らせるように身体を作り変えてしまったのかもしれない。あれだけの大量の血を零れ落としたというのに、そのことはもう、直しようがないのだろう。
今、彼が手に持っている武器は、大振りのナタだった。愛用しているチェーンソーは、駆動する関係でもう1つの腕が必要で、今の彼には存在しない。後は、コートの中に入っているのはセーフティーを解除済みで、弾込め済みの拳銃が所狭しと入っている。
普段の彼の武装からすれば軽装備だが、そこいらの生存者の装備から考えれば異常だ。この世界を放浪する者は彼のような装備をまずすることはない、何故なら、生きるために歩き回っているのであり、戦うために歩き回ってはいないのだから。
向こうの通りから、生きた人間の匂いでも嗅ぎつけたのか、低くうめくような声でゾンビが彼に近づいてくる。右腕を真っ直ぐにこちらへ向けながら、おぼつかない足取りで、だが意思を持って歩いてくる。
ハンターの口角が、歪んだ形で上がり、ナタを持つ手もゆっくりと握りなおす。彼は腐臭で高揚感を覚えてはいたが、不安もあった。片腕を失い、拠点での療養で腑抜けた人間になってしまっているのではないか、と。それは、良い意味でも、悪い意味でも、杞憂だった。
今、はっきりと心に沸き上がった感情は、純粋な殺意。
「いっくぜえええええ!」
気合を入れて声を張り、走り出す。いつもならチェーンソーの音でゾンビをおびき寄せるが、声はその代わりだ。
近づいてきたゾンビの頭を2つに割り、声で寄ってきたゾンビの始末を進める。途中、すぐに抜けなくなったナタを諦め、拳銃を抜き取って銃撃に切り替えると、それにより、更にモンキーゾンビなどの変異体の追加もあったが、最終的には難なく彼は乗り越えた。
貴重な武器であるナタを引き抜き、空振りしてついた体液を払う。彼の周りには、ゾンビとモンキーゾンビ、1体のジャンピングゾンビの亡骸が転がっている。まさしく、狩り出した後のように。
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