954: ◆9W6PAVDo7.[saga]
2016/09/13(火) 19:04:40.73 ID:wQ7Cr34J0
「わ、たしは。そいつらじゃない…」
せき込んだと同時に血も噴き出す。覚に視てもらえれば、それが嘘かどうかははっきりするだろう。が、放浪者の見立てでも、この生存者が拠点まで持つ状況には見えない。だが、偽善にまみれてもすべきことはある。
「…ここより、安全なところに連れて行く。持ち上げるぞ」
抱きかかえようとする放浪者に、生存者は力ないまま彼の胸に両手をあてて押し返す。そして、無駄だと言うように首を横に振った。
「W、WPを知ってるな、ら。これ、を栄田さんに…」
胸元から取り出したのは、メモリチップだった。
「…栄田? 栄田円か? お前、レジスタンスの人間だというのか?」
また、わずかにだけ驚愕の顔をする。だが、それすらも弱弱しすぎて、もう間もなく命尽きるのは明白だった。最後の力だろうか、メモリチップを持った手を震わせながら放浪者に手渡す。
「ったしは、オウル。お願、い。それを栄田さ、んに……」
願いを告げて、事切れた。放浪者の手元に残ったのは、血濡れのメモリチップだけだった。
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