過去ログ - 八幡「俺だけがいない街」
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1:名無しNIPPER[saga]
2016/04/29(金) 17:59:34.09 ID:M5CEjH0d0
 春休み。まだ三月だというのに、妙に暑い日の部活から帰ってきた、その晩のことだった。

(……小町、出かけたのか?)

 外から見た限り、部屋の明かりはどこにもついていなかった。

(今日はずっと家にいるって、部活行く前に言ってたはずだが……)
 そう思いながら、バッグのサイドポケットから家の鍵を取り出し、ドアを開ける。

 真っ暗な玄関が八幡を出迎えた。やはり小町は留守のようだった。

(どこ行ったんだ、あいつ)

 そのまま明かりもつけないで靴を脱ぎ、廊下を上がってリビングのドアを開ける。開けた瞬間、ドアの角に何か当たったような気がしたが無視して電気のスイッチを押した。

 最近替えたばかりのLED電球が、ピンと部屋の全体照らす。
 夜目の効いた彼の目に、LEDの光はまだ眩しかったのだろう。八幡は思わず目を瞑った。

 俗に云う明順応というやつだ。何度かその機会に遭うことがあったため彼自身もう慣れており、気にせずいつも通り、ソファーの前にバッグを下ろし、冷蔵庫から飲み物を取り出そうと、そうして、リビングの床を覆うフローリングへ一歩踏み出した。

 ピタと何か冷たいものを踏んだ、気がした。濡れた雑巾を、靴下のまま踏んだ時のような嫌な感触だ。
 下を見た。すでに目は光に慣れていた。だからそれが何であるか、すぐに理解することができた。

 小町だった。正確に言うと、小町の死体だった。

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