過去ログ - 藤原肇「しんしんと、あたたかい夜に」
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名無しNIPPER
[saga]
2016/04/30(土) 00:32:05.52 ID:O3uXh0RPo
「――これ程の雪を見るのは、初めてです」
しんしん。
降雪を表す最も有名な擬態語だ。
先程よりは幾分か弱まっているものの、それでも止む事無く降り続けている。
四方に降り積もった雪は世界の音を覆い隠し――しん、としていた。
「よ、っと」
我慢出来ずに飛び出して行った子供達の足跡が無ければ、地面があるかも分からなかったろう。
プラットホームへ踏み出した靴は、俺の予想よりも5センチほど深く沈んだ。
「はぁ……」
肇の言葉と感嘆と吐息が、白い霧となって淡く消えた。
踏み締める雪の他に聞こえる音は、子供達のはしゃぎ声だけだった。
「大人の姿は俺以外無し、か」
「逆に考えましょう。Pさんも子供なのかもしれません」
「蒸し返されたな」
「ほら、寒いですし」
肇は、冗談が上手くなった。
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