過去ログ - 藤原肇「しんしんと、あたたかい夜に」
↓
1-
覧
板
20
21
:
名無しNIPPER
[saga]
2016/04/30(土) 00:54:09.25 ID:O3uXh0RPo
ホームの端まで歩いて行こうとして、結局途中で断念する。
視界の九割を白が占める風景を、肇と二人並んでじっと眺めていた。
「……陶芸家の手というのは、特別なもので」
出し抜けに呟いた肇が手袋を外す。
指先に僅かな雪を掬うと、数秒もしない内に水滴へ変わった。
その光景を何とはなしに眺めていた俺に、肇がにこりと笑い掛ける。
「冬でも、雪の中でも、いつもと同じように温かいんです」
「……」
同じような真似をして見せようと雪へ伸ばした俺の手に、柔らかい温度。
骨張った俺の右手を、新雪へ紛れそうに白い、肇の両手が包んでいた。
「ほら、ね?」
「……温かいな」
「ご存じありませんでしたか?」
「ああ」
「プロデュース不足、ですね」
「すまん」
「今日、覚えて帰ってください」
「……そうするよ」
自身の理解不足を反省して。
いつもの様子よりずっと力強い意志に勝てずに。
別世界のような雪景色の中で、別世界のような温度を。
肇がくしゃみをするまでの間、繋ぎ留めていた。
<<前のレス[*]
|
次のレス[#]>>
50Res/32.00 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
板[3]
1-[1]
l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。
過去ログ - 藤原肇「しんしんと、あたたかい夜に」 -SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1461923524/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice