過去ログ - 凛「おとぎ話の」卯月「王女でも」
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2016/05/03(火) 04:37:13.06 ID:1rU0iPMQo
 
 <凛> 
  
 4月25日、午後4時半。 
  
 ライブ開けの学校ではいつも見に来てくれた皆からの感想の嵐で、嬉しいんだけど心が落ち着かない。 
 毎回のように来てくれる子もいるし、自分は行けなかったけどお兄さんがお父さんが、って事を聞かせてもらえることもあったり。  
  
 だから本当は放課後も少し残って皆と居たいんだけど……、でも、今日だけは別。 
 また明日ね、って早めに別れて、事務所への道を急ぐ。 
 
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2: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:37:56.07 ID:1rU0iPMQo
  
 「今向かってるよ、電車に乗ったとこ」 
  
 って送ると、 
  
3: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:38:58.81 ID:1rU0iPMQo
  
 近くのコンビニでアイスを2つ買って、それから。 
 ……卯月の待つ事務所へ。 
  
 昨日ちゃんとお祝い出来なかった卯月の誕生日を、二人っきりで。 
4: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:40:12.32 ID:1rU0iPMQo
  
 <卯月> 
  
 最初はケーキ、って言おうとしてて、 
  
5: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:40:45.03 ID:1rU0iPMQo
  
 多分、凛ちゃんはチョコレート味なんだろうなぁ……。また一口、もらっちゃおうかな? 
  
 わたしには、どんな味のアイスを選んでくれるのかな。 
 ちょっと、ドキドキします。 
6: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:41:16.68 ID:1rU0iPMQo
  
 誕生日プレゼントは、昨日のお昼の公演を見に行った時に楽屋で渡して貰ってて。 
  
 だから、特別な日の、特別な贈り物を選んでもらうって言うドキドキを昨日味わえて、 
 今日は、何でもない日の、私のわがままに付き合ってもらうためのちょっとした贈り物って言うドキドキを味わえるんです。 
7: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:41:56.24 ID:1rU0iPMQo
  
 <凛> 
  
 ちょっと贅沢かな? 
 色々迷ったんだけど、買っちゃった。 
8: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:42:32.68 ID:1rU0iPMQo
  
 結局いつもと同じような選択。卯月の好きなものと、私の大好物。 
 少しだけグレードは高いけどさ。 
  
 どっちなんだろう?それぞれが好きなものを食べるか、それとも交代するか。 
9: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:43:02.66 ID:1rU0iPMQo
  
 でもきっと、少し食べたらすぐにこっちを見て、「凛ちゃんのも美味しそう……」って言うんだろうね…… 
 そうやって、上目遣いをして、じっ、とこっちを向いて。 
  
 「凛ちゃん、一口ちょうだい?」 
10: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:43:31.80 ID:1rU0iPMQo
  
 <卯月> 
  
 凛ちゃん、もうじき着くかな。 
 期待とドキドキが膨らんできて、なんだか落ち着かない、感じ。 
11: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:43:59.19 ID:1rU0iPMQo
  
 いただきます、をしてから最初の一口目は、大事なんです。 
 私の、じゃなくて、凛ちゃんの最初の一口目。 
  
 気づかれてないと思うんだけど、美味しいものを食べる時の凛ちゃんって……ちょっと、ゆっくりで。 
12: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:44:40.38 ID:1rU0iPMQo
  
 「美味しい」って事を知っていても、 
 スプーンでゆっくり掬って、恐る恐る、って感じで口に運んで。 
  
 はむっ、て口を閉じる。 
13: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:45:09.28 ID:1rU0iPMQo
  
 えっと、私、凛ちゃんの「美味しい」っていう顔を見るの、とっても好きなんです。 
  
 例えば、えっと…この間お夕食を凛ちゃんの家でご一緒させて貰った時だとか。 
  
14: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:45:37.65 ID:1rU0iPMQo
  
 本当に美味しいものを食べた時、言葉よりも先に、ふっ、と小さく息を吐いて。 
 その瞬間、隣に居られてよかったな、って思うんです。 
  
 いつも。 
15: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:46:06.75 ID:1rU0iPMQo
  
 <凛> 
  
 いつも。 
 気づけば、私たちは甘いものばかり食べている。 
16: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:46:37.59 ID:1rU0iPMQo
  
 パフェにケーキ、クッキーにチョコレート。 
 卯月と二人でいる間に、アイドルじゃなくて”女の子”の私が作られていっているみたいで。 
  
 甘いものを口実に、二人の世界を作ってる、ってことなのかもね。 
17: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:47:04.76 ID:1rU0iPMQo
  
 そうやって……、甘くて・冷たくて・すぐに溶けてしまうものを。 
 今日も、また次も、って一緒に分かち合うんだろう。 
  
 いつか、この関係が溶けてなくなってしまう時まで。 
18: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:47:31.70 ID:1rU0iPMQo
  
 ずっとこうして居られるとは思ってない。 
 望んでは、いるんだけど。 
 今は同じ方向を向いているから、同じ道を歩んでいるから、こうやって一緒に居られるんだ、って。 
  
19: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:48:11.05 ID:1rU0iPMQo
  
 卯月は皆から好かれている可愛い女の子だから、いつかちゃんとした王子様が現れるって思ってる。 
 その時、私は? 
  
 ”仲の良かった友達”として、彼女の隣に立っているのかな。 
20: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:48:46.27 ID:1rU0iPMQo
  
 それは、……嫌だ。 
 それだけは、嫌。だけど、 
  
 …いつまで、私は卯月の”一番”で居られるんだろう? 
21: ◆K1VRYfmMqw[saga]
2016/05/03(火) 04:49:13.79 ID:1rU0iPMQo
  
 …まだ、わからないけど。 
 考えられないけど。 
  
 それでも。 
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