過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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100: ◆KSxAlUhV7DPw[saaga]
2016/06/12(日) 22:07:35.46 ID:SF7aGoloo

「え? ……あ、あれ? ボク、蘭子さんと話せてました?」

 お互いぽかんとしながら見つめ合う幸子と蘭子。
 先に動いたのは、仮面が外れて満面の笑みのまま幸子の手を取る蘭子だった。

「幸子ちゃん、最後の最後に私の言葉が伝わったんだね! 嬉しいよぅ!」

「ふ、フフーン! ボクはカワイイだけではありませんからね! 時間は掛かりましたが間に合いました、じゃなくて、これぐらいボクにかかれば何てことはありません!」

 かくしてボクとプロデューサー、蘭子と幸子がそれぞれ手を取り合うというなかなかカオスな空間がライブの直前に出来上がった。
 ……うん、ボクらならどこまででも羽ばたけそうだ。
 今のボクに恐れることは何もない。解り合える彼女らと彼がついててくれるのだから。
 これはボクの初めての舞台であり、ボクら三人が一緒に上がる最初で最後になるかもしれない舞台でもある。是が非でも最高のものにしたい。

 最高のものにしたいのだが、ステージでボクがボクでいられるか、大勢の観客を前に呑まれて自分を見失ってしまわないか、一抹の不安は残っている。
 だからボクは――アイドル「二宮飛鳥」として迷いなく舞台へ上がれるよう、「二宮飛鳥」の仮面を再びつけることにした。
 今日に至るまでの「二宮飛鳥」の記憶を辿る。人目を避けるように孤独のセカイへ溶け込んでいたボクは今や、アイドルとして信頼する仲間と共に多くの人の前で輝こうとしていた。ボクのセカイはこうも一変してしまっている。
 それでもボクはボクなんだ。どんなセカイを望むボクでも、彼の目に映るボクは変わらない。「二宮飛鳥」の仮面を被ろうと、ボクという存在がそこに居続ける。見ていてくれる。
 ならボクは、心置きなく強い自分を演じられる「二宮飛鳥」の仮面を被ろう。ボクを知らないこの世界を生きる人々に、ボクという偶像を掲げるならば、きっとこれが相応しい。

 どんなボクも受け入れてくれる人がいる。
 その人のためにも、ステージでは強く輝きたい。
 ……手の震えは止まった。
 さあ、往こうか――

「飛鳥。蘭子、幸子も」

 最後に彼はいつもの笑顔を見せてくれた。
 ボクらにとって、この上ない餞別だ。

「いってこい!」

「あぁ。往ってくるよ」

「我が魔翌力、友のためにも思いのままに解放せん!(プロデューサー、いってきます!)」

「ちゃんと見ててくださいね、カワイイボクを!」



 幕は上がった。

 ヒカリの中へ、ボクは飛び込む。

 そこは全くの未知の世界。

 まばゆい世界を、仲間と共に駆け抜ける――




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