104: ◆KSxAlUhV7DPw[saga]
2016/06/15(水) 00:55:45.25 ID:daPPk+Poo
「えー、それではこのボクが乾杯の音頭をですね、ってあああーー! 勝手に進めないでくださいプロデューサーさん! せめてボクにもコップを合わさせてくださいよー!」
帰宅してしっかり着替えてから、ボクだけは急いでエクステも付けてから事務所の敷地内にあるカフェテラスに集合したボクら四人は、慰労会の真似事を開いていた。ただの打ち上げともいえる。
オトナの世界では仕事帰りの夜にお酒を交えて乾杯するのだろうが、中学生三人がメインでは明るい内にソフトドリンクが関の山だ。この中で唯一のオトナである彼は幸子を置いてきぼりにさせている始末である。
「まあまあ、堅いのは無しでいこう。それより元気してたか? 緊急の案件を抱えちゃってな、相手してやれなくてすまなかった」
蘭子と幸子はともかく、レッスンぐらいしかスケジュールの埋まっていないボクは彼とこうして話すのも一週間ぶりだった。
見かけたら挨拶ぐらいはしたけれど、それだけではもの寂しい。緊急の案件って何だろう?
「友の働きは周知の事実。案ずるでないぞ(プロデューサー忙しそうでしたもんね。気にしないで?)」
「それよりも、どうしたんです? 何もフェスの当日からそこまで忙しくならなくてもいいじゃないですか」
「聞いてくれるか幸子……幸子には先に謝っておかないといけないな。すまん」
「ええっ!? ボクに謝ることがありながらさっきの悪戯って、何なんですかもうっ!」
「いや、つい。まずはこれを見てくれ。この前の、お前達がライブしてる時の写真だ」
鞄から取り出された数々の写真が真っ白なクロスの上に並べられた。その際に見覚えのあるスケッチブックを彼が持っていることに気付いたが、今は置いておこう。こういうのってどこから撮っているのだろう。
うん? 幸子の隣で歌ってるの、これボクだよな……。
ちらと彼女らを見やると、二人とも息を飲むかのようだった。
「いい顔してるだろ? こんな飛鳥、初めて見たよ」
そこに映っていたボクは、普段のボクとは似ても似つかないほど無邪気に笑っていた。
学校でも彼女が言ってたっけ。ボク……こんな顔も出来たんだ。
何度も顔に出やすいって指摘されたけど、これを見せられたら否定しようがない。
「我をも惑わせる微笑ね、飛鳥(飛鳥ちゃん、すっごくかわいい♪)」
「むぐ、やっぱり飛鳥さんはカワイイボクに送られた刺客……?」
それはもういいよ幸子。
「でさ。お前達のライブを見て、方々からあの子は誰だーってその日の内からなったんだ。当然っちゃ当然だがド新人ぶつけてくるなんて思われなかったんだろうなあ。飛鳥、お前のことだぞ?」
「……実感がないものでね。キミの思惑通りに事が運んだというなら、良かったんじゃないか?」
「ああ、良かった。飛鳥にとっても、そして蘭子! お前にとってもだ!」
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