16:名無しNIPPER
2016/05/03(火) 23:06:00.63 ID:G1lrEIoLo
「あぁ、おはよう。二人は一緒だったんだね」
幸子に続いて蘭子が中へ入ってくる。もうそんな時間か、と携帯電話を手に取るとまだ少し余裕があった。
「これでも早めに寮を出たつもりだったんですけどねぇ。さぁプロデューサーさん、時間前の行動を心掛ける立派なボクを褒めていいんですよ!」
「可憐な頬に遺された活力を与えし白き粒、実に甘美なる共演であったぞ(ほっぺたにご飯粒つけた幸子ちゃん、かわいかったな〜)」
「ちょ、蘭子さん! それはさすがにわかります、ボクのカワイイほっぺたにそんな変な粒なんてついてないですから! ……もうついてないですよね?」
「なんだ幸子、お行儀悪いなー。寝ぼけてたのか?」
「だから違いますってばぁ! ……コホン。ほーらプロデューサーさん、こんなにカワイイボクがそんな油断するわけないじゃないですか。ボクのカワイイ頭をなでなですれば思い出してくれますかね〜?」
「はいはい、カワイイねー」
「気持ちを! もっと気持ちを込めて!」
四人が揃ったことでいつもの時間が流れ出す。
幸子がプロデューサーに可愛がられようとするのも、あしらいながら最後にはちゃんと相手をしてあげるプロデューサーも、その様子をただ眺めている蘭子とボクも、いつも通りだった。
そう、いつも通り。変わったところなんて見当たらない。いずれ飽きたら、おもいおもいに過ごすんだ。ボクだったら、そう。蘭子と話したり、時間まで音楽を聴くとかね。
だというのに、どうしてだろう。
今日はその幸子とプロデューサーのやり取りが目から離れなかった。
……あれ? おかしいな。見飽きた光景なんだけど。
くすぐったそうにしている幸子と、なんだかんだと慣れた手つきで扱いを心得ているプロデューサー。そこに特別な意味なんて……ない、はずなのに。
さっきまで浮かれていたボクの胸に、小さな、それでも確かに、よくわからない何かがつかえはじめた。
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