2:名無しNIPPER
2016/05/03(火) 22:05:48.88 ID:G1lrEIoLo
覚えているかい? 幼い頃を。
世界は自分を中心に廻っていて、小さくもたくましいその瞳は輝ける未来を見据えていたはずだ。
……ボク? ああ、ボクもさ。でもボクだけじゃない。そうだろう?
世界はボクのことなんて見向きもしていなかった。
暖かな光は手を伸ばせば届き、積もる想いはいつか実る。そんなものは幻想に過ぎない。逆らうことも許されずボクらはただ流されていく、それが世界の本質だ。
勝手に勘違いしていたくせに、ひどく裏切られた気分だったね。
だからボクは、ボクだけのセカイを創ることにした。
ボクを見放すような、いや、一瞥もくれなかった世界なんかいらない。周りにいたいつまでも幻想に浸っている連中を時に軽蔑しながら、つまらない世界に抵抗するためのセカイを。
――あぁ、キミは今こう思っただろう。『こいつは痛いヤツだ』ってね。
それからのボクは傍観者としてなるべく世界を俯瞰している。退屈な日常に馴染んでしまわないため、セカイへ浸るようになっていった。
おかげで世界についていろいろと知れた代わりに、世界から孤立していったボクはもちろん孤独になった。
ボクは此処にいる。
つまらない世界なんかいらない。
そうは思わないか?
叫んだところで誰の耳にも届かない。届いたところで、そんな愚かなことはやめておけと嗤われる。こいつは痛いヤツだと、抗い続けるボクを認めず流されるままの世界へ飲み込まれていく。最初からボクなんて存在しなかったかのように。
こんな自分を認めてくれるのは、きっと自分だけ。
あぁ、知っていたとも。もう慣れたさ、孤独にだって。
ボクのセカイはボクだけのもの。理解者なんかいなくたっていい、どうせ現れやしないのだから。
……。
そう、思っていた。
キミと出会ってしまったあの日から、未知の世界を知ることになった。世界についてボクは知ったつもりになっていただけだったんだ。
暗く閉ざされたセカイに――ヒカリが差し込んだ。
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