31:名無しNIPPER[saga]
2016/05/10(火) 23:57:10.11 ID:/gCBb+6Yo
……。
……………………。
……えっ、終わり?
物語の締め括りが幸子ずるい、って。いいのだろうか?
……彼女がそれでいいなら、終幕としよう。美談なんかではなく、彼女のありのままをぶつけてくれた結果だというのなら。
「解ったよ。聞かせてくれて……ありがとう」
感謝の言葉も、今なら――彼女になら、素直に言えた。
「……ボク、そんなに幸子に頼ってたかな」
「そうだよー、幸子ちゃんが言ってたもん。まだまだボクがついててあげないと駄目ですね! って」
「ふぅん……幸子がね」
ボクが二人を観測していたように、幸子もボクを観測していたというのか。
いや、ボクはもう観測者ではないんだった。きっと幸子も、そして蘭子も観察者なのだ。こんな世界でも、手を伸ばせば届くものもあると信じて行動している。だからこうして蘭子はボクの隣にいて――
新たに、ボクの部屋にノックをする人も現れるのだ。今日だけで三度目だ。
思わず蘭子と視線が合わさる。そのうちの二回は蘭子であり、その蘭子はここにいる。
噂をすれば、というヤツか。
「飛鳥さーん、ボクが様子を見にきてあげましたよー。大丈夫ですかー? ……もう寝ちゃいましたかねぇ?」
「……くすっ」
「ふふっ……」
来訪者が誰であるかなんて、候補が他にいないのだから解りきったことだ。
ただそれが、今は嬉しかった。
「我が迎えれば、天に使えし者は如何な対応をするであろう?(私がお出迎えしたら、幸子ちゃんどんな反応するかなあ?)」
「さぁて、ね。それより、そっちでいくのかい?」
そっちとはつまり、仮面を被った方の蘭子だ。
ボクの代わりに幸子を迎えるため腰を上げた蘭子は、僅かに逡巡し、それでも答えてくれた。
「本当はこうして話すの……やっぱりまだ恥ずかしいけど、飛鳥ちゃんも外して待っててくれたから……おあいこ、だよね!」
「……ちぇっ、バレていたんだ」
エクステを付けてない姿を晒すことに恥じらいを覚えていたボクを、蘭子はお見通しだったようだ。
参ったな。蘭子には隠し事をしてもあまり通じなくなりそうだ。
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