過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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35:名無しNIPPER[saga]
2016/05/18(水) 21:25:30.00 ID:wEJbruLdo



「来てくれたんだね。いや、キミがここに辿り着かないわけがないか」

 明くる日の昼下がり、ボクはプロデューサーと二人きりになるべく屋上で待っていた。話がある、とだけメールで告げて。
 また一足早く事務所へ訪れようかと企んでみたものの、起床してからも蘭子と幸子に世話を焼かれてしまいずっと行動を共にしていたから、こうでもしないと二人きりにはなれなかった。
 昨日の今日だ、世話を焼いてくれることには感謝しているけどね。

「ごらんよ、プロデューサー。あの地平の彼方にまでボクらのように意思を持って選択を決定し、それに基づいて行動を開始する、ヒトって生き物がごまんといる。それなのにこの空間にはキミとボクだけだ」

「それが意味するところ……この作為的にも運命的にもみえる巡り合わせに、キミは何を思う?」

「……なあ、飛鳥」

「うん? なんだい」

「病み上がりなんだからこんな寒いとこで俺を待つなよ」

 冷たい風が、それみたことかと言わんばかりに吹き荒れた。

「もしかしてこうやって身体を冷やすから風邪でも引くんじゃないのか?」

「……もう少しキミは情緒というものを重んじるヤツだと思ったが、クチュッ」

 くしゃみが出てしまった。
 これでは情緒も何もないじゃないか……!

「ほらー、治りかけが一番危ないんだぞ。ぶり返したらどうするんだ」

「ボクが凍えそうな時はキミが溶かしてくれるんだろう? 氷の膜に覆われて打ち震えている魂ごと、さ」

「飛鳥、なんか今日はアクセル全開だな。どうした?」

 全開……か。全開、フルスロットル、ありったけ。

「ボクがボクであることに変わりなんてない、それを再確認したくてね。キミを写し鏡にすることでさ」

 ボクの不調、変調とでもいうべきか。その原因を突き止めるべく原点に立ち返ろうというわけだ。
 彼女らのいない、キミとボクのセカイ。そこにいるボクがボクの知る「二宮飛鳥」であるかどうか、それさえ解ればいい。あとは自分自身へ問いかけるまでだ。

「まあいいけど、こじらせないようにな」

 それはどちらの病についてなのか、とは言及しないでおく。
 ……不自然に見えてるのかな、ボク。
 落ち着こう。この胸の高鳴りもいつも通りなんだ。何も変わったところはない、はず。


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