過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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43:名無しNIPPER[saga]
2016/05/18(水) 21:54:57.74 ID:wEJbruLdo

「見てみたい、って言うんだろう? 蘭子……でもそれは、理解るよね?」

「うむむ……やはり障壁を張るか……!(むー、やっぱり簡単にはいかないよね……)」

 言葉のいらない探り合いの様相をボクと蘭子は視線のみで呈していた。
 彼女のグリモワール、スケッチブックに描かれたセカイを覗こうとするのは、彼女いわく禁忌に触れる行為だ。しかし近しい趣味を持つ者が側にいると、単純にそれについて語らいたくなることもれば、相手の力量の程を測りたくもなる。
 見てみたい気持ちと見せたくない気持ち、特に後者を蘭子はよく心得ているだろうから、この展開は容易に予測出来た。
 ボクも自分の描く漫画については外へ向けて発信したいとは思っておらず、ただ創造主として自分の思い描く世界を形にしていたい。だから誰かに見せる必要もない。

 ……とはいえ、ボクはボクで蘭子の描くセカイに興味がないともいえないのだが。

「やむを得ぬ……。我も今はグリモワールが手中にない、だがそれ以上に……! 来る日が我等に訪れ、その身に宿す魂が業火に焼き尽くされぬ境地へ到った時こそ……世界を交錯させるミサを開きたいものね(しょうがないかぁ。私のスケッチブックも今は手元にないし、どうせあっても……! でもいつか、自信がついたら見せ合いっこしたいなー)」

「あぁ。その時が来たら、ね」

 誰に見られても臆することのない境地か、どのくらい研鑽を積めばボクも辿りつけるだろう。
 今のボクに自分の描いたものをひけらかす気は更々なくとも、技術に裏打ちされた自信が表現者としての承認欲求を掻き立て、いずれ大衆からの共感を得ようとすることも……?

「あのー、すっかりボクのこと忘れてません? こういうのをですね、ボクは……もうっ!」

 幸子がふてくされてしまった。ボクの部屋に訪れた意味を考えれば、こうなって然るべきではある。
 蘭子の手前、はっきりとは言わないのが幸子らしくもあった。

「ところで、我が同胞幸子は何故ここに?(ところで、幸子ちゃんはどうして飛鳥ちゃんのお部屋に?)」

「ええっ!? それは……その、後学のためといいますか、ねぇ?」

「ボクに振られてもな。さっきも言い掛けたんだが、ボクからはもう幸子次第としか言えないよ」

「そうですか……。わかりましたよ、じゃあ今度はプロデューサーさんに教えてもらいます!」

 蘭子が一連の流れに疑問符を浮かばせている間に、幸子は携帯電話を取り出した。


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