70: ◆KSxAlUhV7DPw[saga]
2016/05/31(火) 22:53:44.58 ID:D9m/pSOOo
「あ、あんまり見ないで欲しいなぁ〜……」
空腹を満たしたボクらが改めて集ったのは蘭子の部屋だった。
意外にも部屋の中は彼女のセカイを彩る装飾をほとんど施されておらず、幸子とは対照的に住んでいる本人が部屋から浮いてしまっている。
「すっきりしてるものですねぇ。あれ、もしかしてボクの部屋だけ……」
口をつぐむ幸子だったがもう遅かった。ボクの部屋も徐々に物が増えていくのだろうが、幸子の部屋ほど雑然としないよう気を付けなければ。
「あの、今度は何をお話するの?」
「蘭子、キミのスタンス……いや、覚悟……? 何と名状するべきか……とにかく、たとえばキミがこれからどうしていくつもりなのかを聞きたいんだ」
「うん? 何のこと?」
首を傾げられてしまった。
察して貰えるものとばかり思っていたから調子が狂う。
「こんなこと気にするボクの方がおかしいみたいでなんだか気恥ずかしいが……。つまり、ボクらの想い人が一緒だったわけだ。それを知ってなおボクらがこれまで通りのボクらでいられるか、という、ことなんだけど」
「うーん……。飛鳥ちゃんはこのまま仲良しでいるの、イヤ?」
「嫌じゃない。ボクだって、二人とは……。ただ、いざ自分がこんな状況に陥ってみると、そういうことになるんじゃないかって不安になるんだ。ボク……やっぱりおかしいかな?」
「いいえ、何の問題もないですよ」
気を取り直した幸子が自信満々に口を挟んできた。
……幸子はこうでないと。
「ボクたちはアイドルなんですから、そもそも恋愛はご法度です。取り合うことも出来ないのに争って険悪に、なんかなりませんって」
フフーン、と幸子は鼻を鳴らす。
それについてはボクもこの世界の扉を開く前、厳密に言い渡されたっけ。そういうものだと解っていたし、自分がそうなることは当面ないと踏んでいたから特に気にはしていなかったが。
「……ずっと抱えたまま冷めるまで待つしかない、か」
アイドルにしてくれた人を好きになり、アイドルになったが故にその気持ちを封じなければならない。随分と皮肉なものだ。
とはいえ、許されるなら想いを伝えるのかといえばそうでもなく。如何ともし難い、これが恋愛ってヤツなのか……。
考え込んでいると、それを見越してなのか蘭子はボクの迷いにポツリと道を示した。
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