過去ログ - 飛鳥「ボクがエクステを外す時」
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82: ◆KSxAlUhV7DPw[saga]
2016/06/05(日) 22:13:29.70 ID:y3rgRIdpo

「ほらな。だから言ったのに」

「……ほんの少し熱かっただけさ。キミが飲めるのなら、ボクにだって」

 せめてこの一杯だけは飲み下す。幸いこれだけ熱いんだ、時間を掛ける口実はある。

「実は甘い方が好みなんですよね、飛鳥さんって」

「!?」

 少しずつ飲んでいるのにむせそうになった。
 確かに甘い方がボクの好みには近い。だがそれを今指摘しなくてもいいじゃないか……!

「あれ、好み……? そうでした! プロデューサーさんに好きなタイプを聞くつもりだったのに、何でコーヒーをみんなで飲んでるんでしょう!?」

「けほっ、けほっ!?」

 まだ口に含めてすらいない蘭子までむせた。やってくれるな、幸子。
 こんな時だけ聞き逃したりなんてことはなく、彼も反応を示す。

「俺の好きなタイプ? コーヒーのこと、じゃなさそうだな」

「え、えぇ。何と言いますか……」

 もはや誤魔化す方法はない。幸子は破れかぶれに二の句を継いだ。

「プロデューサーさんのす、好きな女性のタイプってどんな人なのかなと思いまして、ね? 担当されてるアイドルにもいろんな方がいますし、どういった人が好みなのか……気になったまでですよ」

「うーん。女の子が好きそうな話題だなあ、俺のなんか聞いてどうするんだ?」

「そりゃあ、プロデューサーさんってまだご結婚とかされてませんし……ねぇ?」

 幸子が救援を求めてボクらに振ってきたが、何て返すのがベストなんだろう。
 らしくない、と彼に思われるのは避けたいが……ボクだけ素知らぬ振りというのも彼女らに悪い。
 蘭子はどうしてるのか横を振り向くと、ばっちり目が合ってしまった。似たようなことを考えていたのだろうか。
 これらのやり取りからボクら共通の意思だと受け取ったのか、彼はバツが悪そうに首筋を揉んでいる。

「幸子の言う通り結婚もまだだし彼女もいないけどさ。まさか俺、中学生の子達に心配されてるのか? 複雑だな……」

 何か勘違いしているようだが、それより今は誰かと付き合っていることもないのか。
 それだけ引き出せただけでもよしとしておくべきだった。

「今は仕事一筋、とでも言っておこうか。お前達こそそういった話をするなとまで口うるさくするつもりはないが、アイドルであることを忘れてないでくれよ?」

「わかっていますとも。それで、どうして答えてくれないんですか? 仕事に集中しているとしても、好きな女性のタイプくらいはあるでしょう?」

「む……」

「我も、友の嗜好がいかなるものか、聞いてみたいなぁ……なんて」

 蘭子も声を細らせて素とごちゃまぜになりながらではあるが、引き下がるつもりはないようだ。
 彼はどう見ても答えまいと渋っている。そこにどんな理由があるのか、それにどんな意味があるのか、ボクは思考を巡らせていた。

「どうでもいいだろう、俺のことなんか。飛鳥を見習え飛鳥を」


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