過去ログ - P「伊織のおでこが広くなっているって!?」
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◆66FsS2TZ4lNJ
[ saga]
2016/05/05(木) 23:34:24.90 ID:YfyBLfgN0
休憩を挟みつつ、曲を予定通りに完遂。
しかし未だ鳴りやまぬコールを背に、私はプロデューサーに一言。
伊織「最後の雄姿、見ててよね」
P「・・・ああ」
ゆっくりとステージ脇から中央へ。
私の姿を認めると、ファンの歓声は一際大きくなり、持続する。
伊織「みんなに聞いてほしいことがあるの」
マイクを通し放たれた言葉に、観衆は一瞬で静まり返る。
伊織「私、みんなを騙してるの」
ザワザワと波紋のようにざわめきが広がる。
私を見る目が軽蔑の眼差しに変わると思うと、足が震える。
でも彼は言った、ファンの人は私の見た目でなく、中身を好きでいてくれていると。
その言葉を、信じたい!
バサッとカツラをとる。
伊織「私、毛根転移症なの」
再び辺りがシーンとする。
先ほどとは違い、絶句といった表現が適切だろうか?
伊織「私の頭の毛根が少しずつ動いていく病気で、最初は後ろにいって、そこから背中から今はお腹の上の方にあるわ」
伊織「もうすぐ顔のところに移るの。それが終わると頭に戻るらしいんだけど、確証はないわ」
伊織「顔に毛穴がある状態でアイドルはできないから引退することに決めたわ。でも、最後まで嘘をつくのは嫌だった!」
伊織「ごめんなさい」
私は頭を下げた。
好きだったアイドルに実は髪がなく、そんな頭を見せられたファンの気持ちはどんなものなのかしら?
罵声やヤジが飛んでくるのではないかと恐怖していた。
怖かった。でもこれが私なりのけじめ。
どんな言葉でも甘んじて受け入れよう。
でも、私に飛んでくる言葉は優しいものばかりだった。
中には涙を流して私に感情移入している人もいた。
それを見て、聞いて、私も涙を流していた。
最後の一曲だけ、私は真の姿で歌って踊った。
泣きながらで、髪もない散々な姿だったけど、最近で一番楽しかった。
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