過去ログ - 佐久間まゆ「白くて苦い……」一ノ瀬志希「Love Potion♪」森久保乃々「えっ」
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3: ◆Freege5emM[saga]
2016/05/08(日) 16:37:47.65 ID:4XUVZHTx0
もりくぼは寮のエレベーターに乗り込むと、階数の表示を見上げました。
デジタルの数字が、1、2と切り替わって、やっと3階。
扉が開いて、エレベーターを出て、寮の自室へ向かいます。

時間は、夜よりの夕方。
仕事帰りの足取りは、自分でも似合わないなぁと思うぐらい軽いものでした。



今日の仕事は、とある少女漫画雑誌のインタビューでした。
本屋さんだけじゃなくコンビニとかにも並ぶ、もりくぼ愛読の雑誌です。

そんなたくさんの人から見られる雑誌に、もりくぼの記事が……
話を聞いた時には、体が震えて声も出ませんでしたけど、なんとかこなすことができたようです。
珍しく、もりくぼの担当プロデューサーさんも『よくやった、文句なし』って言ってくれました。

そのお仕事で、もりくぼの助けになってくれた人がいます……。

その人が……佐久間まゆさん、です。



まゆさんは、もりくぼの寮のルームメイトでした。
担当プロデューサーは違う人ですけど、芸能界の先輩として、これまでもお世話になっていました。

今回の仕事も、まゆさんに相談に乗ってもらいました。
もりくぼの扱いは、アイドルと読者代表の間みたいなもので、
元・読者モデルのまゆさんとはある意味立場が近く、その辺りの距離感を聞かせてもらいました。

それと、少女漫画雑誌なので……恋愛の話も確実に出るわけですけど……。
恋愛なんて漫画や小説でしか知らないもりくぼは、うまく答えられそうもなくて……。

……そんな弱音を吐くと、まゆさんは、

『恋する女の子の気持ち……まゆでも、少しなら教えてあげられると思いますよ……?』

と言って、作り話だけじゃわからないような心のことも、教えてくれました。
好きな人のためならできることはなんでもする、すること自体が喜びなんだとか……。

まゆさんの口ぶりが、とっても真に迫っていたのが、気になりますけど……。



もりくぼが仕事先から寮へ帰る頃には、まゆさんも寮室にいるはずでした。
寮室へ向かう足取りが軽過ぎて、フワフワと浮いてしまいそうです。

もりくぼは、仕事がうまく行ったことを、まゆさんに報告したくて仕方がなかったんです。
これまでプロデューサーさんから、『できる』って言われても、ダメダメだった気弱なもりくぼが、
まゆさんのおかげで、初めて『できた』んです。今日初めて、自信らしいものを持てたんです。

もりくぼは寮室のドアを開け、靴を脱いで、
蛍光灯の明かりが透けて見える内扉に手をかけました。



「まゆさん、私……」

もりくぼは、それ以上言葉を続けられませんでした。



まゆさんは、自分の机の前で椅子に座っていました。
机の上には、ページに何も書いていない冊子が、無造作に開かれていました。

まゆさんの横顔は、その紙の色を思わせるぐらい真っ白でした。



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