過去ログ - 提督「加賀が俺の心の隙間を埋めるお話」
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名無しNIPPER
[saga]
2016/05/16(月) 04:59:33.98 ID:5wQUmt4T0
あれから提督の心は忽然と姿を消した。恐らくあれは心に空虚を孕ませすぎた結果として体に収まりきらず外に出てきてしまったものだったのだろう。何らかの方法で空虚をなくせば元通り。空虚を含まない風船が充実によってしぼむようなものだと、そう考えることにした。
提督の仕事ぶりは悪くない。むしろかなり優秀な実績を誇っていた。また同僚たちにも恵まれていて、優秀者に伴う嫉みなどにも出会わず良好な生活を送っている。それでも時折、提督は不可思議な喪失感を訴えた。
「俺は確かに今恵まれている。含んだ言い方? いや、不満があるのではない。物質的にも精神的にも非常に充実している。なんなら心から俺は幸せ者だと言っても良い。
でも、ときどき妙な感じになるんだ。何かこの幸福の代償に失ったものがあるのではないか。
多世界? そうじゃない。例えばもし俺が大統領になっていたらなどの別世界の幸福に思い馳せるような機会費用的なものじゃなく、もっと根本的な……」
加賀は椅子に座る提督を後ろから抱きしめる。提督はそれに対して驚きも嫌がりもしなかった。己の違和感の正体を探るべくもう一度記憶の再試行をしているようだった。
静かな時が流れる。加賀は知っている。加賀が提督の心に入り込む余地がないということを知っている。提督の心は過剰に観念で充実しているのに、それに対する現実は余りに実在が不足していた。加賀だけは提督の喪失感が観念と実在の不均衡に基づくと知っていた。
己の実在感がその「妄想」に消費され、提督がそれで慰められるのなら、加賀はそれで良いと考えていた。きっと加賀が提督の心に映ることはもうないだろう、それで良い。
だからだろうか、加賀は気づくのに遅れた。提督が僅かばかり握り返したきたその手がまさに加賀自身を包んでいたことに。
おわり
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