19:名無しNIPPER[sage saga]
2016/05/18(水) 20:06:33.79 ID:UMEp/1BY0
PM5:30 オーディション参加者控え室
見学が終わって控え室に戻ってきた肇は、他の候補者に聞こえないように小さく溜め息を吐いた。
周りの候補生は皆、浮かれたようにキャピキャピと先ほど見て回ったモバプロの各施設の感想を言い合っている。
ーー良い夢を、見られました。
面接は散々なものだった。
昨日自分をこの会社に案内してくれた、あの背の高い男性は、どうやらモバプロのプロデューサーだったらしい。
彼は肇の作った器から彼女のちっぽけな虚栄心を見破り、肇は彼に投げかけられた質問に答えられずに自らの惨めな浅はかさを露呈させた。
――合格できる要素がない。
気が付くと他の候補者は皆帰ったようだった。一人残された肇が慌てて席を立ち、
「えーっと、あ、藤原肇さんですね?」
女性に声をかけられた。顔を上げれば、三つ編みのお下げをした、愛らしい女性だ。
「今日は1日お疲れさまでした。私はPのアシスタントをしております。千川ちひろと申します。今日はこれから何か予定はありますか?」
「……いえ、夕食を食べてからホテルに戻って、明日の夕方の新幹線で地元に戻る予定です」
ちひろと名乗った女性は肇の返事を聞くと、ポン、と胸の前で手を合わせて、それじゃあ、と続けた。
「よろしければ、もう少しお時間頂けますか?」
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