8:名無しNIPPER[sage saga]
2016/05/20(金) 07:47:10.60 ID:nKNVkMal0
あかりはよくその願望を熱弁していた。
折に触れて、何度となく。
春先の平穏さを映す綿雲を一緒に仰ぎながら。
夏場の暑い日、一雨降るんじゃないかと思わせるような斑雲に背中を向けながら。
秋、早まる夕焼けに映える羊雲に目を眩ませながら。
冬の入りに姿を見せる積雪をもたらす入道雲を、私の家から窓越しに眺めながら。
姿形が千変万化するそれらに目を向けて、可愛らしい笑みを浮かべていた。
かと思えば、一緒にくもに乗る方法を考えないかと願い出てきたこともあった。
私もそんな物語に興味がなかったワケじゃない。
おとぎ話のような、ファンタジーのような、ロマンチックな話。
雲に跨がって空を旅できたら、どれだけ気持ちいいんだろう……
なんて、あかりの話を聞きながら、幼心に考えていたものだったっけ。
実のところ空想に膨らませる胸も、それはそれはどきどきしていたハズだ。
まあ、そんなのはもう何年も前の話。
結衣と3人で公園に行って遊ぶことが増えた頃にはもう、それより昔の夢物語をご執心な様子で語るあかりの姿なんて見た覚えがなかった。
行動としてその感受性の片鱗は至るところに発揮されていたけど、夢として表に出てくることはどんどんなくなっていった。
……と、ずっと思っていた。
結衣がその話題を出すまでは。
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