43:墓堀人[saga]
2016/05/23(月) 11:53:15.19 ID:QQKHlK4R0
薄暗い部屋の向こう、浴室の方から鼻歌交じりの水音が聞こえてくる。
その浴室からは先日歌番組で聴いた、薄っぺらいラブバラードがご機嫌な調子で漏れ聞こえていた。
私はそれを遠ざけるために布団を被ると、下腹部の異物感に向かって舌打ちをする。
痛み、悲しみ、絶望や諦観。暗い感情のスープを嚥下した身体は不快感に苛まれていて救いがない。
それでも、処女を失った程度では何も変わらないという事はわかった。
肉体の変化が精神に及ぼす影響について事務所の誰かが語っていた気がするが、体の膜が一枚破られた程度で人は変われないらしい。
男に振られ、男にもたれかかって男を受け入れてみても、自分の中の何かが決定的に変わった実感は無い。
痛みに耐えて自分を傷つけみても、隙間だらけの心の中では相変わらず暗澹たる不快が渦巻いているだけだ。
こんなものか。そんな感想しか出てこない。
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