過去ログ - 【キズナイーバーSS】 「仄かに薄れて消えるる私は」
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5: ◆2DegdJBwqI[saga]
2016/05/26(木) 14:47:57.92 ID:8pdSuCqxo

 私の口の中からにおいがする。苦い唾。身悶えする。

 かさかさと、ベッドと服が音を立てる。

 制服姿の穂乃香を思い出した。私服姿の穂乃香を思い出した。

 穂乃香。あの柔らかくて温かい優しい身体。険のある眉。何かあると、メガネの奥ですぐ細くなる瞳。

 変化の薄い表情。すっと下に落ちるかぼそい顎のライン。冷たい声。そして、あの、乾いてばかりいる唇。

 私は唇を舐めた。濡れた唇をすぼめて、考えた。あのセリフ、どうしよう。

 そこ以外はほとんど全部仕上がっていた。ああ、どうしよう。答えは決まっているはずだった。死んだヒロインの手紙。

 ――私のことを忘れないで。永遠に私のことだけを愛していて。


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