過去ログ - 荒木比奈「最初の一歩が踏み出せなくて」
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9:名無しNIPPER[sage saga]
2016/05/26(木) 23:35:10.97 ID:SxnKCCpl0

翌日
PM1:30 都内

「あれ?」

 多くの人が忙しなく行き交う街で、比奈は見慣れた顔を見つけた。
 人混みの中からひょっこり顔を出すぼさぼさ頭の瓶底眼鏡は、紛れもなくアパートの隣人、モバPのものであった。

「Pさ――」

 声をかけようとして、止める。Pの隣には帽子を目深にかぶってサングラスをかけた女性がいたのだ。

(担当アイドルっスかね)

 2人を目で追っていると、街角のカフェに入っていった。
 ――どうしたものか。
 Pに対し、火急の用事があるわけではない。比奈にしてみれば奇跡的な確率できまぐれを起こし、ちょっと東京の街をぶらついてみようと思い立っただけのことである。
 だから無理に声をかける必要はないのだ。ないのだが――

(――まぁ、予定があるわけでもないし)

 顔を見かけておいて無視というのもなんだか決まりが悪い。
 それに、ああいう小洒落たお店には一度入ってみたいと思っていた。おそらく今後二度と訪れることがない場所であっても、一度くらい経験しておけば今後の創作活動の糧にはなるだろう。
 幸いなことに今日はいつものジャージではなく、それなりに見られる服装をしてきている。

(……み、見られる服装、っスよね?)

 自分のセンスに自信がなくなり、心の内で誰にでもなく問いかけながら、カフェの扉を開けた。



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