154:名無しNIPPER[saga]
2016/06/01(水) 11:46:13.83 ID:49W9hqJ1o
楓はこれまでに十分すぎるほど一人の女性を愛し、一人の人形を愛してきた。
そして、それが10年という時の実を結び、役割を終えたことを悟ったのである。
楓は、血の繋がりのない3人の間に、人間とドールの新しい家族の形を、これから世界に広がっていく新しい人類と人形の社会の姿を、遺伝子として残した。
飛鳥が自分の悲しみと孤独の、死の記憶を世界に残そうとしたように。
楓「……さあ蘭子。泣くのをやめて、ね?ほら、ベッドに戻りましょう」
蘭子の涙を拭い、ベッドへ連れて行った。
とても眠れそうな様子ではなかったので、楓は蘭子が寝てしまうまで傍にいてやろうと思った。
蘭子「……かえでさんも一緒に寝よう?」
楓「1人用ベッドに2人は狭いですよ」
蘭子「いいもん、狭くてもかえでさんと一緒がいい」
楓「まったく、甘えん坊なんだから」
楓は蘭子のすぐ横に一緒になって寝た。
楓「誕生日なのに、あんな話をしてしまって、ごめんなさい」
蘭子「……ううん、私、大丈夫だよ。それに、すぐに居なくなるってわけじゃないんでしょ?」
楓「…………そうですね。もしかしたら当分先かもしれないし、少しせっかちだったのかも」
蘭子「私、もう泣かないよ。かえでさんのこと、好きだもん。約束する」
楓「ふふっ、じゃあ約束ね」
楓はそう言って蘭子の真っ白な肌に触れた。
冷たさはもう感じなかった。
次第に楓は眠くなって目を閉じた。
穏やかな闇が楓を飲み込んでいった。
………―――。
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