過去ログ - 「二宮飛鳥は孤独を忘れてしまった」
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5: ◆kiHkJAZmtqg7[saga]
2016/06/04(土) 22:52:30.71 ID://1N5xrh0
「……落ち着いたか?」
「うん。……恥ずかしいところ見せてしまったね、プロデューサー。」
「いいんだよ。そーゆーのを全部受け止めるのが、俺の役目だ。……っと、みんなを待たせちまうな。行くぞ、飛鳥」
……うん?
今、実に不穏な言葉が聞こえた気がした。
「…………みんな?」
「ああ、事務所に残ってた子たち、もういっそ全員車で送り届けるって話になったんだ。ここが最後で、飛鳥以外はみんな揃ってる」
若干のすし詰め状態だがな、と笑いながら話すプロデューサーに対して。
ボクの顔は紅潮するとともに血の気が引くという、器用なことをしでかしていた。
鏡を見るまでもなく泣き腫らした顔。これを、みんなに見られる……?
「それじゃあ、ボクは歩いて帰るから」
「待て待て待て!話を聞いてたのか!?無茶はしないんだろう!?」
それとこれとは別問題だ。
踵を返して駅の出口へと歩いていく。
「おい本気かよ!こら待て、大人しく寮まで送らせろ!」
「絶対に、嫌だっ!!」
そのまま全速力で走り出す。
改札をくぐり抜け、階段を一段飛ばしで駆け上がる。
駅を出てすぐ近くの道路に事務所の車を見つけたので、そこから遠ざかる方へ方向転換。
「全力ダッシュとか、冗談だろおい!」
「さあさあ、捕まえてごらんよ!」
ボクよりもプロデューサーの方が足は速いけど、不意打ちで走り出した分まだ距離が残っているようだった。
「っ、ふふ、ははははっ!」
ああ、可笑しい!どうしてこんなことになっているんだろうか!
らしくないと思いつつも、笑いが止まらなかった。
「くっそ、俺を本気にさせやがったなぁっ!?」
どたどたと走る足音。それがやけに多いことに気づいて、振り返ったのが運の尽きだった。
「ーーーっ!?」
「飛鳥ちゃん、待てー!」
「なんだかよく分からないけど、面白そうだから突撃ー!」
「いい加減諦めろーっ!!」
プロデューサーだけでなく、何故か事務所のみんながボクを追いかけていた。あるいはボクとプロデューサーを、か。
いやそんなことより、面食らって足を止めてしまったボクの方が問題だった。
まあまず、プロデューサーに捕まる。さらには後ろからやってきたみんなにももみくちゃにされることになってしまった。
「うわ、ちょっ、危ないから!ストップ!ステイ!」
上げた悲鳴はかき消され、身体のどこが誰と触れているのかもわからない状態で車まで連行される。
そしてプロデューサーの言った通りのすし詰め状態、それでも直前よりはスペースのある車内で、みんなしてびしょ濡れになったことを笑いながら思うのだ。
ボクが弱さをさらけ出すことで手に入れた繋がりはこんなにも暖かい。
―――ああ、本当に。
二宮飛鳥は孤独を忘れてしまった、と。
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