96: ◆Q/Ox.g8wNA[sage saga]
2016/06/20(月) 05:27:57.81 ID:TIm4kW2d0
「でもパパとママが烈火の様に怒って追い返しちゃって…」
「あー…、だろうねえ……」
それはそうだろう。
赤城みりあは芸能事務所のプロデューサーに殺されたのだ。
言い換えればみりあが芸能活動をしていなければみりあは死ななかった事になる。
そう思ったゆりあ達の両親が、芸能関係にどういう印象を持つのか、想像に難くない。
ましてや当事者の346プロにはどれ程の怒りが向けられただろうか。
「それは…無理だろうねぇ…」
都は机の上に置いた箱から煙草を一本引き抜き、火をつけてひと吸いすると、天井に向けて煙を吐いた。
そんな様子を笑顔で眺めていたゆりあが、
「あー…、でも都さんがアイドル復帰するなら一緒にアイドルやってもいいかな?? ねっ、一緒にやろっか??」
そう無邪気に都に笑いかけるゆりあの発言に、驚いた都はモロに煙を飲み込んでしまい、大きく咳き込んだ。
「…十年前ならともかく……勘弁してくれたまえよ…」
当時なら兎も角、手も足も伸びきった今の都では、ゆりあと並んで歌い踊ってもギャグにしかならないだろう。
しかし、そう言いながらも、都は想像していた。
十年前の自分と揃いの同じ衣装を着て、笑顔でステージに立つみりあの姿を。
その光景を思い浮かべると、都の心に温かい物が込み上げてくる。
それを思うとゆりあの提案も悪い事ばかりではなさそうだ、と都は思った。
復帰は絶対にしないがね、 と心に決めながら。
(完)
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