12:名無しNIPPER[saga]
2016/06/15(水) 00:51:26.18 ID:sf9XWsg90
シャワーを浴びる彼を待ちながら、何気なく部屋を見渡す。
よく見たらいろんなところに思い出が散らばっている、学生時代から8年間過ごした部屋。
朝まで一緒にお酒飲んで、就職先でうまくいかなくて、アイドルに誘われて、幸運にも人気が出るようになって。
長いようで短い季節は、ほとんど彼と過ごしたんだと気づかされる。
実のところ、事務所の近くとかセキュリティとか、もっともらしい引っ越しの理由は全部ウソだ。
キッチンのすみの焦げ跡とか、ほんのちょっと引っ掻いたフローリングとか、建付けの悪くなった押入れとか。
なにより、いくらアロマを焚いても上書きできない−−でも私にしか気づかない、かすかにしみついた彼のにおいとか。
探せばきりがないほど、探したくなくても見つけてしまうほど、至る所にばらまかれた思い出と共に暮らすには、ちょっとだけ彼との日々を楽しみ……愛しすぎていた。
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