過去ログ - 【FEif】カムイ「私の……最後の願いを聞いてくれますか?」―4―
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971: ◆P2J2qxwRPm2A[saga sage]
2016/12/24(土) 23:05:14.06 ID:S6YpyFGu0
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 その子は貴族のお嬢様で、大きな屋敷を持っている。その屋敷も今日だけは騒がしく、多くの装飾が施されていていつもとはまるで違う雰囲気を醸し出していた。
 馬を引き連れて私が至ると、門の前で待機している知り合いのメイドさんと目が合う。合ったと共にすぐさま深々とお辞儀されたので少しだけ戸惑った。いつもなら軽い会釈くらいなのだが、今日に限って来賓にする深々としたものだからだ。

「おはようございます、リリス様」
「そんな様なんて大丈夫ですよ。いつもリリスって呼んでくれてるじゃないですか」
「そうですね。でも、本日のリリス様は特別なお客様ですから、ここは少々冷えます。ご案内いたしますので、どうぞこちらへ」

 そう促されて、私は色々と準備の進んでいる館の中を進んでいく、外で立っていたのは私を待つためのようで門が閉まる音を遠くに聞いた。作業している人々はそれぞれの従事服に身を包み、その作業に没頭している姿はどこか圧巻で、一人指定があったとはいえディアンドルであることに少しだけ浮いていることを自覚する。

「ふふっ、お嬢様からご指定があったそうですね」
「はい、私もできればいつもの服装が良かったんですけど……その、誕生日プレゼントを、用意し忘れて……」
「そうだったのですか? お嬢様とリリス様は戦争の頃からのお知合いのはずでは?」
「……その、誕生日に関しては全く知らなかったんです。戦争が終わった時は出会って半年以上経過してましたから。それに――」

 私自身そういうのがわかりませんからと告げようとして、思わず口を閉じた。

「それに?」
「その、知り合って長く時間が経ってから聞くのって恥ずかしいじゃないですか……」
「ふふっ、そういうことですか。でも、そんなあなたのおかげでお嬢様は――」

 と、メイドさんも何かを言い掛けて口を閉ざすと、にっこりと笑みを浮かべた。この自分だけ知っていることを、渦中の相手に見せつけている顔、私はあまり嫌いじゃなかった。だけど、やっぱり気になる。

「私のおかげって一体……」
「ごめんなさい、これ以上は言えません」

 そう言って話を切り上げて、吹き抜けのホールの階段をのぼり、来賓室に到着する。いつも以上に綺麗になっているその部屋を一望してからソファに促され腰を下ろす。それに合わせて、紅茶が準備され私の前に差し出された。シナモンが加わったその紅茶の香りが鼻を擽る。

「では、お嬢様をお呼びいたしますので。ここでお待ちくださいませ」

 その言葉に深々としたお辞儀をして彼女が退室し、それと同時に紅茶を口にしてすぐに考え込む。


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