11: ◆JgoilToZJY[saga]
2016/06/20(月) 06:10:01.94 ID:9fy5FiS10
京ちゃんのお父さんは事のあらましを京ちゃんに伝えると、足早に村へ戻った。
村人みんなに伝えて、優希ちゃんを探さねばならない、と。
私と京ちゃんはこの場に取り残された。
「蛇は、蟻にでも食わせるしかないようだな」
「探しに行くの?」
「勿論だ。お前もそのつもりだろ、咲」
「うん。でもあてはあるの?」
「……咲は?」
「ない……」
「どうするか……」
京ちゃんは顎に手をあてて、思考を巡らせているようだった。
私の内心は複雑だった。優希ちゃん、どうするつもりなの?
「オヤジは足跡を辿るって言ってたし、俺たちが闇雲に探しても仕方ない。何か手掛かりを見つけよう。優希の家に行くぞ」
「うん、わかった」
優希ちゃんの家は集落の一角にある。何の変哲もない木造建築だ。
この場所からそう遠くない。けれど京ちゃんは、走った。私は、ついていくのに精一杯だったけど、決して追いつけない訳じゃなかった。
京ちゃんが本気で走れば私なんて追いつけない。速い、でも追いつける、って塩梅にしてくれているんだ。
こんな時でも人を気遣える京ちゃんの優しさに、私は少し、恨みに似た感情を抱いた。
そんな感情も優希ちゃんの家に辿り着いた頃には綺麗さっぱり消えていた。我ながら単純だと思いながら、京ちゃんの後に続いて家に足を踏み入れる。
何度も来た事がある。優希ちゃんは、私の大事な友達だから。勿論、京ちゃんにとっても。
親はいなかった。きっと責任を感じて娘を探し回っているのだろう。
「咲」
「何か見つけたの? 京ちゃん」
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